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【イカレ竜】甘味処「スイート&ビター」(3)

 そんなランセルと俺を見て、エヴァが可笑しそうに笑っている。夫婦の醜態を晒すような事はしたくないんだが…今更か。 「お前は…」 「まあまあ、許してあげて下さいなグラース様。ラン様だってお忙しいもの。それに、浮気してるなんて誤解して、あんなに怒るなんて可愛いじゃない。それだけ愛されてるってことですわよ」 「ポジティブ過ぎないか?」 「ネガティブよりはよくってよ?」  腰に手を当て何でもないように笑うこの子に大物を見る。マコトの子供はどれも優秀で面白く育っているな。マコト自身の教育方針が「のびのびと幸せに」なんだからな、敵わん。 「でもラン様、あんまり縛っちゃグラース様も息苦しいわ」 「すみません…」 「二人は私の理想の夫婦なんですもの、いつまでも仲良くいてもらわないと」  理想が低くはないか? 俺は思うのだが、これも昔から言われている。エヴァは俺が羨ましいらしい。 「こんなにいつまでも溺愛してくれるなんて、嫁冥利につきますわよ。それに、グラース様だって何だかんだ言ってラン様の事大好きですもの。もう、可愛いですわ」 「こら、エヴァ!」 「恥ずかしがっちゃって。私もラン様みたいにいつまでも大切にしてくれる旦那様が理想なのよ」  何の恥ずかしげもなく言うエヴァを前に、俺の方が恥ずかしくなる。見ればランセルもタジタジになって顔を赤くしている。そうして互いに顔を見合わせ、苦笑した。  帰り道、エヴァが持たせてくれたお土産を手に俺はランセルと黒龍の王都を歩いていた。 「なんか…恥ずかしかったですね」 「お前のせいだ」 「すみません」  珍しく本気で落ち込んでいるコイツの隣で、俺は自然と繋いだ手を見ている。いつのまにか普通になったこの行為を、どこか微笑ましく。 「浮気なんてしないんだぞ、まったく」 「だって…」 「信用できないのか?」 「…信じてますけど、絶対なんてありませんし…それに、悔しくて…」  そんな馬鹿な事を言うコイツを、俺は穏やかに見ている。しょぼくれるのはいつもコイツだ。 「俺に浮気されたくなかったら、いつまでもいい男でいろ。嫉妬なんてしてる暇ないだろ」 「! はい!」  ハッとして俺を見上げ、生真面目に返事をする。そういうランセルだからこそ、俺は側にいるんだろう。いつまでも、こうして手を繋いで。

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