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【日常】エッツェル留学記3(3)

 飛び出して、時間が経って、僕は知らない街で蹲っている。適当に、見つからないように細い道とかも入ったから何所にいるか分からない。  この街では竜化できないようにシールドが張ってある。空から見つける事もできない。  また、迷惑を掛けてしまった。考え無しに感情にまかせて酷い事をしてしまった。心配してくれたグランを突き放した。  こんな事ばっかりだ。だから誰も、側にいてくれないんだ。  思ったってもう、仕方がない。愛想尽かされた。それに、留学先で問題起こしたなんて父上や母上に知られたら、どうなるんだろう。きっと、凄く怒られる。もしかしたら、家からも追い出されるかもしれない。  庇うみたいに自分を抱きしめて、薄暗い路地に座り込む。そのまま俯いていると、不意に足音がした。 「ん? こんな所に人がいるが…なんだ?」  声に顔を上げれば、同い年ぐらいの魔人族の青年がいる。どうやら後ろにもいるらしい。 「角がない? お前、なんだ?」 「…竜人族、だけど…」 「竜人! なんだってそんなのがここにいるんだよ」 「招かれて…」 「本当か?」  下卑た笑い声がする。僕は怖くなって立ち上がろうとしたけれど、それより前に青年達の方が動いた。素早く壁に縫い止められ、声を出そうにも喉を押さえられる。何かが首を締め付けて、声が出ない。 「なぁ、竜人族ってアレがでかいって聞いたんだけど、本当か?」 「っ!」  ニヤリと笑った奴が僕のズボンを下ろしにかかる。そうすると直ぐに下半身がスースーし始める。下卑た声が、嘲る視線が僕を見ている。 「マジででかいな!」 「おい、このまま晒しておけば面白いんじゃないのか?」 「『ビッチな僕にお仕置きして下さい』って書いておこうか」  ゲラゲラ笑うそいつらを睨み付けて魔力を込めても声が出ないからどうにもならない。魔力で魔人族に勝とうなんて無理もいいところだ。  これは、罰なんだ。考え無しの世間知らず、甘ったれた考えのくせに迷惑ばかりかけるから…。  耐えるように目を瞑る。その背後から手が伸びた。 「!」 「おい!」 「やべぇ!」  何が起こったのか分からないまま、僕は暗い場所に背中から倒れた。でもここは知っている。シキ様が俺を連れてきてくれた時に通った亜空間と同じだ。 「エッツェル!」  グランが僕を抱きかかえて、必死に名を呼んでいる。そして直ぐに、僕の喉に絡んでいるらしい封じの術を解いてくれた。 「大丈夫か、エッツェル!」 「っ」  こいつ、怒んないのかよ。僕、殴った。それに、心配してくれたのに酷い事を言った。ずっと気に掛けてくれていたのに、飛び出して迷惑をかけたのに。  僕はグランに向き合って、押しつけるようにキスをした。  もう、どうでもよかった。キスをしたなら、嫌いじゃないんでしょ? それなら、全部貰って欲しい。壊すように抱かれたら、きっと全部忘れられる。 「エッツェル…」 「グラン、僕を抱いてよ」 「そんな事…」  「そんな事できない」そういうのは分かった。聞きたくない。  奪うようにキスをして、上の服にも手をかける。前を開けて、肌を晒した。下半身は丸見えのままだ。 「お願い、欲しい。グラン、お願いだから」  砕くように酷くして。暴くように攻め立てて。何もかも消える程に溺れれば、痛みも寂しさも消えてくれる。もう、性奴隷でもいいんだ。必要だって言ってくれれば、もう全部どうでもいいから。  でも、グランは僕の体を押し戻して、自分の着ていた上着を着せかけてくれる。そして、僕をこっそりランス様の屋敷の部屋に戻してくれた。 「グラン…」 「エッツェル、少し冷静になって。俺も、少し落ち着く」 「あ…」  去って行く背中を引き留められない事は分かっている。その背を僕は何度も見た。忙しそうな両親の背中。兄上や姉上の背中。僕は一人ここにいて、その背を引き留める術を知らない。 「うっ……ふぅ…」  溢れてくる涙を拭う事もできないまま、僕はずっと自分を抱いて泣いていた。

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