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【R18】寡黙な騎士をこの手に抱いて(7)

 だが、ルーセンスは思い悩むようにその場を離れない。俺の肩を掴んだまま、黙っているばかりだ。 「どうした?」 「…お慕いしているのです」 「はぁ?」  顔を赤らめ、酷く落ち込んだ顔で何を言い出すのか。今さっき俺を拒んだばかりだというのに。  それでもルーセンスは止まらない。酷くばつの悪い顔をして、寡黙な奴がここぞとばかりに話すのだ。 「貴方にずっと焦がれておりました。年甲斐もなく、分不相応だと分かりながらもお慕いし、貴方に触れられる事に恥ずかしながらも悦びを感じていました。浅ましい…近習としてあるまじき心です」 「ずっと…とは、いつからだ?」 「お会いした時からです」  ということは、俺が160、こいつは200を超えていたはずだ。  なるほど、確かにあの時分では変態か。そう思いながらも、どうしようもない愛しさがこみ上げるのだ。仕方がない奴だと、笑えた。 「まだ幼い貴方にこのような事を思ってしまった己の醜さがあまりに恥ずかしく、同時に己の性癖というものに気づかされたような気がして……いたたまれない思いです」 「確かに、あの時では多少変質者だな」 「申し訳ありません!」 「だが、今ならば釣り合おう」 「…え?」  間抜けな顔をする男の唇に、俺はもう一度触れた。  まったく、馬鹿な事だと思わないか? 俺がコイツの中に見た熱は確かだったんだ。誘いかけてものらないから不安だったが、分かった今なら躊躇いなどない。俺は、コイツを求める。 「ルーセンス、お前の心に問う。俺が好きか?」 「…はい」 「ならば、問題ないな。お前が俺の子を産めよ」 「……えぇ!」  反論の余地など与えない。俺はルーセンスの腕を引き、そのままベッドへと押し倒した。  それでも軍籍にある者なのかと言いたくなるほどあっさりと転がったコイツの上に素早く乗った俺は、そのまま服の前を暴いていく。  現れたのは引き締まった体だ。胸板が厚く、筋肉の盛り上がりを感じる肌に手を置けば、伝わるほどに鼓動を早くしている。 「いけません、シーグル様」 「動くな!」  言えば、ビクッと強張り止めようとした手を引っ込める。本当に従順なものだ。おかげで助かる。  そろりと唇を這わせ、隆起する体をなぞる。こうした行為など経験のない体は素直すぎるほどに反応した。ヒクンと震え、肌の色が染まっていく。 「可愛らしいものだな、ルーセンス。経験がないな」 「そのようなっ」 「こうした想像を、したことはないのか?」 「!」  赤い目が俺を捕らえてプルプルと震えて首を横に振る。嘘か本当か分からないが。 「あぁ、逆か。俺を組み敷くか?」 「そんなこと!」 「まぁ、最初は許せ。俺が産むのも構わないが、最初の子だけは黒龍でなければ後が面倒だ。その後は話し合って好きにしたらいい」  一応は面倒な王家としての責任がある。俺がコイツの子を産めば産まれてくるのは赤竜の子だ。そうなると将来的に、黒龍の王太子が赤竜という面倒な状況になる。血筋としては正しいのだが、混乱が酷そうだ。 「…………」 「ん? なんだ?」  顔をそむけ、真っ赤にしながら何か呟いている。聞き取れずに問えば、ルーセンスは更に追い詰められたのか困った顔をした。 「貴方を下になど…考えた事はございません」  ボソボソと小さく言った男に、俺はニンマリと笑う。つまりコイツは俺にこうしてのし掛かられる事を望むということだ。 「いい心がけだ、ルーセンス。たっぷりと可愛がってやる」  俺の欲情は、久しぶりに大きく傾いていた。

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