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【イカレ竜・R18】もふもふ王国への野望(4)
「おや、お前も来てくれたんだ、ゼノン」
横合いから近づいてきた人物を見て、僕は声をかける。
美しいグレーの髪、そこから生える鋭角な三角形の耳。頭部が小さく、体躯はがっちりと逞しい。切れ長の金の瞳がこちらを見据え、ニッと鋭い笑みを浮かべる。そのお尻からは、フサフサとした狼の尻尾が生えている。
「アンテロ、話は聞いた。お前、獣人から妻を娶るらしいな」
「おや、耳ざとい。ゼノン、お前もおいで」
「お前、も?」
開いている隣にどっかりと腰を下ろした狼族のゼノンは鋭い視線をアンリ、キャロルへと向ける。それに、二人はニコニコと笑みを浮かべた。
「なんだ、お前達が先なのか?」
「そうだよ、ゼノン」
「お先に失礼します、ゼノン」
「ちっ、出遅れたか」
多少悔しそうな表情をしつつも、空気はそう壊れない。それもそのはず、彼らは親族であり、互いに幼少期から接している間柄だ。
ゼノンは王太子の系図を継ぐ狼族で、アンリやキャロルを弟分として面倒をみている。狼族というのは味方とすれば面倒見が良く、多少の事に怒らない。
まぁ、ゼノンに関しては口が悪く体が大きく、かつ表情が皮肉っぽいので遠ざけられるけれど。
「俺も入れろ、アンテロ」
「妻になるのかい、ゼノン? 言っておくけれど、僕の立場上まずは産んで貰わないと困るんだけど?」
「俺にお前の子を孕めと言うのか?」
「もしかしたらね。お前、孕ませたい方だろ?」
からかう様に言うけれど、これは本当。ゼノンは絶対に抱かれる側には回りたがらない。そうでなければこの性格、この美貌、そしてもふもふの尻尾は好ましい。何より匂いも色香があるのだ。側にいて、自然と体が熱くなるような匂いだ。
ゼノンはしばらく考えている。そして、何か妙案でも浮かんだような顔をする。
「誰かに跡取り産ませた後は、やぶさかでもないんだろ?」
「ん? あぁ、まぁね」
「それまで待つ」
「そうまでして僕でいいのかい?」
「お前の側は面白いし、俺の弟分を二人も持っていくんだ。それに、こいつらが相手なら腹も立たない」
そう言うと、ニッと笑う。うん、この性格は好きなんだ。サッパリと後を引かないから。
「いいよ、君がそれでいいならね」
「よし、決まりだ。それで? 他には誰を誘うんだ?」
「ん? それはね…」
僕は会場に視線を走らせる。そしてそこに、目当ての人を見つけた。
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