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【イカレ竜・R18】もふもふ王国への野望(5)

 美しい黒髪に、同じく黒い丸い耳。尻尾は猫族のようにしなやかにくねる。色は白く、僅かに見える表情は凛として美しい。  アンリをソファーに座らせ、僕は立ち上がる。そして、未だ僕に半分背中を向けているつれない彼の横に立った。 「やぁ、ネロ」 「!」  眦の切れ込んだ緑色の瞳が驚いたように見開かれ、僅かに肩が揺れる。虚を突かれたようなその視線に、僕の体は甘く痺れる。  やはり彼の匂いが一番ゾクゾクする。今すぐにでも抱きしめて、押し倒して、その体を思う存分蹂躙したい。そう思わせる程の強い色香だ。 「来てくれて嬉しいな。ねぇ、あっちで話さない?」 「話さない」  ツンとつれない様子すら、僕は楽しくて仕方がない。だって、白い肌が染まっている。丸い耳が、僅かにヒクヒク動いている。その耳、今すぐ口に含んで舐め回したいな。 「ネロ、今日のパーティーの目的、知ってる?」 「お前が来たからだろ?」 「うーん、半分正解。本当はね…」  言って、僕は囁くように彼の耳元に唇を寄せた。 「僕のお嫁さん探し」 「!」  明らかにネロの体が震えた。匂いが濃くなったように思う。これだから、彼を逃がしたくないんだよね。 「僕は離れに泊まってる。ちなみに、キャロルとアンリ、ゼノンは名乗り出たよ」 「っ!」  睨み付ける緑の瞳に艶がある。負けず嫌いで素直じゃない、可愛い僕の黒ヒョウは何かを言いたげなのに視線を外して何も言わない。そんな所も可愛いけれど。 「君ならいつでも受け入れる。僕が帰る前に、離れにおいでね」  一言残してその場を去れば、ネロの手が僕にほんの少し伸びる。分かっていて、僕は背を向けた。その手が彼の意志によって僕を掴むまで、僕は彼を手にはしないと決めている。  ソファーに戻れば、ゼノンがニッと笑う。キャロルとアンリも、困ったように笑っていた。 「やっぱり本命は、ネロなんだ」 「ん?」 「お前、昔からネロのことかまい倒してるだろ。あれであいつ、すっかり拗ねてるんだぜ」 「本当は、アンテロ様の事をお慕いしているのですがね」 「おや、そうなのかい?」  キャロルの意外な言葉に、僕は目を見開いて、次にはニッと笑う。どうやら、可能性はありそうだった。  僕がネロと出会ったのは、五年くらい前の事。祖父母の所に数週間身を寄せていた時の事だった。  ネロはゼノンの部下で、軍部に所属している。そのツテで知り合ったのであって、彼は王家の系譜にはない。だが、出会った時に妙に胸が騒いだのは確かだった。  彼はとても美しいヒョウ族、しかも黒ヒョウだった。意志の強い緑色の瞳に、凛とした表情。顔立ちも好ましく、身のこなしもしなやかだ。  彼と出会い、僕はゼノンに頼んで滞在期間中に何度も彼を誘った。ネロの方もまんざらでもなかったんだと思うけれど……そこから二年程会えなかった間に、拗ねてしまったらしい。  ゼノンの話では、僕は次にいつくるのだろう。そんな事を何度か聞いていたとか。  ゼノンのほうも面倒見がいいから、「気まぐれな奴だからな」と言いつつもケアはしてくれたらしい。  そこを放置してしまったのは、僕の落ち度なんだろうね。  何にしても、この滞在期間中に何とかしたい。僕の目は、彼のしなやかな背を見ていた。

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