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【イカレ竜・後日談】もふもふ王国への野望(13)

 程なく自己紹介が行われた。  それによると、ロップイヤーの彼はキャロル。コーギーの少年はアンリ。狼族の青年はゼノンというらしい。  全員が王家筋にはあるようで、幼少期より交流があったようだ。そのせいだろう、バランスがよい。とりあえず妻の中で争いが起こる様子はなかった。  こうして三人の名前や素性が分かった頃に、診察を受けていた黒ヒョウの青年が入ってくる。穏やかな、どこか慈母のような温かさと大らかさのある表情がこちらを見て、一つ丁寧に頭を下げた。 「お気遣いを頂いて有り難うございます」 「大事な体だ、過保護にしすぎるくらいでいい」  俺の言葉に柔らかく笑った黒ヒョウの青年は、他の三人の側に座る。そして状況を聞き、慌てたようにもう一度頭を下げた。 「申し遅れました。私はネロと申します。ヒョウ族、黒ヒョウの獣人で、ゼノンの部下でした。よろしくお願いします」 「よろしく、ネロ」  穏やかに笑い、頷けば紅潮したような笑みが浮かぶ。素直そうな青年だ。  俺は改めて四人を見た。多少緊張しているらしい硬い表情を見つめ、穏やかに笑う。多少しくじったからな、怒りが収まらずいきなりアンテロを殴り倒した。 「さて。出迎え早々、失礼をした。俺はアンテロの母で、グラースだ。四人とも、うちの息子を選んでくれて有り難う。心から歓迎する」 「俺はグラース様の側近で、ハリスっす。アンテロ様のお世話係もしてたっす。生活全般、あれこれやってるんで関わる事も多いと思うっす。よろしくっす」  傍らに立つハリスもさりげなく自己紹介をしている。それに四人は顔を見合わせてぎこちなく、「よろしくお願いします」と頭を下げた。 「急な事で、俺しか相手が出来なくてすまない。今夜、家族だけの食事会を用意している。そこで改めて、こちらの紹介をさせてくれ」 「お気になさらず、グラース様。俺達も配慮が足りなかった」  一番年長だろうゼノンが背筋を伸ばして応じてくれる。やはり狼族だ、群れを率いる度量がある。金の瞳が緊張を見せつつもこちらを見ているのを、俺は笑った。 「そう畏まる事もない。俺は口が悪くて言葉も荒いが、別に怒っているわけではない。皆の事は本当に歓迎しているんだ」  穏やかに笑えば多少気も緩まるが、やはり慣れない土地ではまだ難しい。  俺は苦笑し、アンテロに今までふて腐れていたアンテロに視線を向けた。 「アンテロ、時間までゆったりと過ごせ。部屋も準備は出来ているから、様子を見て休んで貰うように」 「さすが母様、部屋の準備も整ったの?」 「当然だ。まったく、これ一度きりだからな」  苦笑し、ポンと肩を叩いて俺はその場を後にする。少し、時間が必要なのだろうと判断したのだ。 「いいお嫁さんっすね」 「あぁ、まったくだ」  「あいつには勿体ない」とは言わず、俺は心から笑みを浮かべた。

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