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【イカレ竜・R18】オオカミさんと歪な王子様(1)

 妻を四人迎え、そろそろ半月が経つ。  僕は公務の合間にネロの部屋を訪ねた。ノックをして部屋に入ると、いくぶん怠そうなネロが体を起こして弱く笑っていた。 「大丈夫?」 「ん、平気」  ベッドの側まで近づいて、その縁に腰を下ろして、僕はしっとりと濡れた髪を撫で上げた。  ネロは悪阻が酷くて、ここしばらくとても辛そうにしている。お腹の子に異常はないものの、本人は少し痩せたかもしれない。元々しなやかな細身なのに、今は怠そうだし、食事もまちまちだしで少し心配。  そんな僕を察してか、ネロはとても緩く笑っている。 「平気だよ、アンテロ。グラース様も気に掛けて、公務の合間に様子を見に来てくれるし。お茶の時間にはキャロルが来て、話をしながらお茶を飲む。ゼノンもアンリも手が空く頃に来てくれて、話をしてくれるんだ」 「そっか。みんな、いい奴だね」  言えばネロは頷いて、その後少し申し訳ない顔をする。 「ごめん。私もアンテロの仕事を手伝わないといけないのに、こんなんで」 「何言ってるの? そっちは今まで僕一人で出来ていたんだから、無理にする必要なんてないんだよ。今は何よりネロの体が大事。だから、気にしないで」  額にキスをすれば、肌がしっとりとしている。少し熱があるのかもしれない。やっぱり、心配だな。 「また後で来るね」 「え? それはいいよ、アンテロ。それよりも、他の伴侶のことも愛してあげて」  驚いた様子のネロに、僕はふと思う。  確かに半月、キスをしたり一緒にお風呂に入ったりはするけれど、肉体的な事はない。みんな新しい生活が始まったばかりだからと思っていたんだけれど、確かに少し離れすぎているだろうか。 「特にゼノンは、皆に気を使ってるし、疲れてると思う。あいつは自らしな垂れる事なんてないから、アンテロが気遣ってあげて」 「そうだね」  ゼノンの姿を思い描き、僕は微笑んでネロの部屋を後にした。  執務室に行けば、ゼノンがあれこれとしてくれている。書類の整理をしながら、入ってきた僕を見て首を傾げる。 「お、戻ったか。ネロの様子どうだ?」 「うーん、辛そう。母様は平気だったから、心配もしてなかったんだけどね。母様を基準に考えるの、やっぱ間違いなのかな?」 「あー、だな。ハリスさんに聞いたけど、グラース様って全部の子供を自分一人で産んでるらしい。んなこと、獣人族だってあんまないからな。まさに軍人気質だ」  改めて母の強さを思い知る。伝説的なんて聞いていても実感なかったけど、今になってそれを知った。 「まっ、病気じゃないし、食べられる時には食べてるだろ。少し痩せたとはいえ、あいつは元軍人で体力もある。平気だ」 「うん、だね」  とは言え、やっぱりあの様子を見ると心配ではあるんだけれどね。  ゼノンは僕の側に来て、正面から腰に手を回してキスをする。覆うように深く舌が入り込むキスはクラクラする。気持ち良くて息が上がる。 「心配するなって。お前がそんな顔をするとキャロルも心配するし、アンリは無駄に明るく振る舞おうとするんだ。しっかりしろ、平気だ」 「ん」 「アンテロ」 「分かってるつもり」  実際、他の妻の前ではそれほど心配の顔を見せない。ゼノンだけだったりする。  僕はこいつをけっこう頼っている。なんていうか、素直に甘えられるというか。そうそう、母様に感じが近い。サバサバして、どこか男前で。 「ゼノンはいい男だね」 「はぁ? 今更知ったのかよ」  そう言って、どこか鋭くニッと笑う野性味のある顔が、僕は結構好きなんだ。

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