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【イカレ竜・R18】オオカミさんと歪な王子様(2)
その夜、ネロの様子を見てお休みを言い、キャロルやアンリともお休みのキスをして、僕はゼノンの部屋を訪ねた。
「どうした?」
「ん、ちょっとね」
そう言って招かれるまま部屋に入れば、中は案外簡素だった。キャロルもアンリも、自分好みの部屋にしていて物は多い。けれどゼノンの部屋は物が少ない。ほぼ、初期のままだ。
「物がないんだね」
「ん? あぁ、そうかもな」
そう言いながら、酒の瓶をローテーブルに置いている。
「基本、あんまり物を多く置きたくないんだ」
「だから持ち物少なかったのかい?」
「あぁ。服は少し多いから、クローゼットの中は埋まってるが、他はな」
もっと、色んな物を持ち込んでいると思っていた。
キャロルは趣味の陶器のコレクションは捨てられなくて持ってきて、今も飾り棚の中に綺麗に収められている。
アンリはあれこれ遊ぶ物が多い。ゲームだなんだと、子供のようだ。
ネロは子供の頃の物を持ち込んでいた。思い出ってものだ。
なのにゼノンの部屋には、そうした物が見られなかった。
「欲しいもの、ないの?」
「ん? そうだな…今の所はな。本は書庫に行けばあるし、数冊借りた。他も、基本揃ってるからそれで不自由はない」
そう、本当にそれだけだと言わんばかりのゼノンは楽しげに笑っている。
程なく酒がグラスに注がれる。そうして軽く乾杯をして、流し込んだ。喉が焼けるような強さの酒に少し咽せると、なんとも楽しそうに笑われた。
「大丈夫かよ」
「うっ、強いよこれ」
「それがいいだろ?」
楽しげにもう一杯、ショットグラスの酒を飲み込む。薄い夜着から熱い胸板が覗き、それが酒で薄く色づく。そして匂いも、香ってくる。
ゼノンの匂いはけっこう強烈。長くいるとクラクラする。抱きたいのではなく、委ねたくなる匂い。竜人族しかこれを感じられないなんて勿体ない。こいつの匂いは力強くて、でも決して男臭くはない。爽やかさもある。
ふっと、頬に手が触れて上を向かされる。そうして塞がる唇を存分に堪能した。遠慮なく口腔を弄られ、気持ちよさに背が震える。腰に響く甘い疼きに、ゾクゾクする。
「お前、酒弱いよな」
「ん?」
「顔赤くして、目が蕩けて。誘ってるのか?」
男臭い笑みと深い金の瞳。見上げながら、僕からキスをした。誘ってるんだよね、実は。
「誘われてもいいよ?」
「可愛くない言い方するなよ、アンテロ」
「んっ…君の匂い疼くんだ。欲しい、ゼノン」
首筋を舐められ、甘い声でおねだり。
満足してくれたのか、ゼノンは男臭く笑って僕を抱き上げた。ほんと、逞しい。これでも僕、軽くはないのにね。
そのままベッドに降ろされ、直ぐに上に陣取られる。柔らかく首筋を噛まれると、ジクジクと疼く。痛いのが気持ちいいのは、僕的には常識。
「はぁ…」
「心地よさそうだな。お前、俺が噛んでも嫌がんない。狼族のこの癖、他部族だと不人気なんだぞ」
「そぉ? ゾクゾクする…気持ち良くてたまらないよ」
捕食されそうな危機感と、僅かな痛み、そして目の前の金の瞳。どれもが僕を興奮させる。腰の深い部分が響くように疼くんだ。
「なんだ、お前M気あったっけ?」
「どっちかと言えばSって言われるけれど…抱かれるなら痛いのも好き。酷くされると燃え上がる」
「ド変態じゃないか」
呆れたように言いながらも、ゼノンはちゃんと乗ってくれる。首筋にも、鎖骨の辺りにも跡をつけていく。染められるようでほんと、ゾクゾクするんだよね。
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