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【イカレ竜・R18】オオカミさんと歪な王子様(4)

 前を擦りそうになったら、ゼノンにその手を叩かれた。そして、金の瞳にきつく睨まれた。 「待て」 「っ」  軽い命令に、僕は従う。戒められている分けでもないのに、僕の中から自分で前を扱くという選択肢が消えた。  どうして、そうなったのか。分からないけれど、でもダメだ。  そうするうちにゼノンの指が増える。入り口を広げる圧迫が増え、中で感じる異物感が増していく。キュッと締まっていくように思う。ひっかくような中の刺激はより増した。背に緩く電流を流されるように、ゾクゾクとしたものが駆け上がる。  指先が前立腺を優しく撫で上げる。それだけで、甘く甘く痺れて足が突っ張る。喘ぎが漏れて止められない。こんな快楽を僕は知らない。あっという間に終わる、痛みと快楽が混ざったものしか僕は…。 「はぁあぁ!」 「反応早すぎる。軽くイッたか」  中が蠢いて、ゼノンの指を絡めている。それを開くようにされると、異物感が増して犯されている感覚が増す。されるがままに感じて、緩やかに上っていく。 「ゼノン、挿れてぇ」 「ばーか、これからだ」  指が三本に増え、一杯に狭い部分をこじ開ける。その圧倒的な内部からの圧迫感に悶えた。  この場所で、こんなに他人を感じた事はない。分けも分からない間に熱くなって、突き抜けるように何度も達した経験しかない。  たった一度、複数の男の慰み者になり、腹の奥深くに何度も熱い滴りを受け、喉奥に流し込まれ、匂いに鼻がやられて……懇願しても、止まらなかった経験。 「うっ、あぁ……」  思いだしてきた。覚えていないはずの詳細を。ゼノンのように優しくはない、肉欲のみの時間。  根元を戒められて果てる事を許されず、目隠しは一度も取って貰えなかった。マグマのように下肢に溜まった熱は、無理矢理な刺激に何度も吹き上がったのに、戒めに邪魔をされて逆流して、痛みに引きつった。 「アンテロ」  優しい声に意識が戻る。柔らかな金の瞳が見下ろして、丁寧にキスをする。とても優しく、とても大切に。 「平気だ、俺が教え込んでやる。愛される気持ちよさってやつをな」  三本の指がまた、優しく内部を蠢く。僕はその感覚を素直に受け取った。  何度も撫でるように刺激された前立腺が、徐々にヒクヒクと引きつってくる。足に力が入って、もがくようにシーツを蹴った。緩やかに、でも大きな波が押し寄せていく。  訳が分からず、飲み込まれる……。 「っ! あぁぁ!」  腰が震えたまま激しく跳ねた。それがなかなか止まらない。前からはお漏らしのように先走りが溢れていくのに、射精ではない。僕は何度も腰を振り、体を震わせて絶頂していた。  ゼノンの指が抜ける。それでも、中の蠢きは止められない。緩く腰を振ったまま、呆然とゼノンを見ている。  前戯のやり直しみたいに痛いくらい張りつめた胸を愛撫されるけれど、それにすら中がキュッと締まって背に突き抜ける。頭馬鹿になりそう。 「ずっとイッてる顔してるな」 「多分、そうだよ…っ」 「気持ちいいだろ? 一瞬の激しい快楽じゃ、こんなふうに持続した快楽は得られない。お前の体は今、俺の指先一つでも達する」 「!」  クチュッと、指先が鈴口に埋まった。それは激しいくらいの刺激になって僕はまた一人でイッた。中がキュンキュンする。でも、強張りは濃いめの先走りを溢すばかりで達しない。 「?」 「…お前、最初にどれだけ虐められたんだよ。ったく」  頭をかくゼノンが前を口に含み、先端を刺激する。その刺激だけで気持ちよくてたまらない。息がきれて、なのにどうしてイケない! 「あっ、だめ……こわれ、る……ぅはぁぁ!」  中では何度も極めているのに、どうして。  僕の方が困惑する。そして、記憶を漁った。戒められていたそこが、解放を許された瞬間はどんなだった。 「あっ…許し…」 「ん?」 「ゼノン……許すって、言ってほしぃ…壊れる…」  ガクガクと震えている。わかんなくなる。思いだした、許可なく出したら切り落とすって言われていた。怖くて、できなかったんだ……。  ゼノンはゆっくりと僕の強張りを刺激した。そして、限界まで腫れたそれを吸い出していく。 「ほら、イけ。お前の意志で、俺の前で出してみろ。嫌な思い出じゃなく、今の俺に従え。アンテロ、お前を戒めるものなんてないんだぞ」 「ゼノ…」 「気持ちいいなら、いくらでもイけ」  喉奥まで咥えられ、筋を舌で刺激され、吸い上げられた。  頭の中が切れるんじゃないかって思う激しい衝動に、僕は果てた。止まらないくらいたっぷりと、少し恥ずかしいくらいに。  でも、体が言うことをきかないんだ。ガクガク震えたまま空腰を振って、背を仰け反らせて中も前も収縮していく。そんな経験のない快楽に落ちていった。  全てを飲み込み、ゼノンが口を離す。僕はその様子を呆然と見つめていた。セックスで呆けるなんて、初めてかもしれない。  でも、分かった。僕が受けに回らなかったのは、本能的にできなかったんだ。たった一度の強烈すぎる快楽を体は覚えているのに、受けた加虐が未だに枷になっていた。 「いい子だ、アンテロ。これで、次からは存分に俺と愛し合えるな」 「……え?」  次と、ゼノンの言葉を飲みこんだ。そして、まじまじと彼を見る。  もうその気がないのか、僕の隣に横になった。 「…しないの?」 「しない」 「なんで」 「今日のはカウンセリング。顔も知らない野郎の命令断ち切ってやっただけだから」  そう言うと本当に、広いベッドの上で眠ろうとする。前、まだ膨らませてるのに。 「次はたっぷりと、俺の愛情ってもの注いでやる。今日以上に気持ちいいから、覚悟しろよ」  言いながら眠そうな声。金の瞳は本当にそのまま、閉じてしまった。 「……」  屈辱だ。でも、嫌いじゃない。無防備なゼノンを見て、僕はニヤリと笑った。  明日の朝、こいつが目を覚ますよりも前に起きて、襲ってみよう。今日の分だけでも、返さないと面白くない。 「くくっ」  楽しみができた。僕は隣に寝転んで、同じように瞳を閉じる。奥の疼きは消えて、スッキリと体が軽い。よく眠れそうだ。  翌朝、素っ頓狂な声を上げつつも僕の口にゼノンが熱を流し込んだのは、言うまでもない。

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