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【日常】新緑の騎士の奮闘記(5)

 グラース様から竜人の子が攫われているという話を聞いてから、数日が経った。 「え? ジュディス様を慰問にですか?」  グラース様からの突然の申し出に、私は困惑していた。  だが困惑しているのは私ばかりではない。グラース様自身もまた、戸惑っている様子だった。 「国有庭園を貸し切って、身寄りのない子供達の為に祭りを開く事は決まっていたんだが、突然ジュディスがそれに参加したいと言い出してな」 「ジュディス様から、ですか?」  意外すぎる言葉に、私は言葉がなかった。けれど一つ、思い当たる事もあった。私が孤児だと、ジュディス様に話してしまったから。 「申し訳ありません。私が原因かもしれません」 「ん?」 「私が先日、孤児である事をジュディス様にお話してしまったのです。ジュディス様はそれをとても気にされていました。もしかしたら」 「なるほどな」  グラース様は納得がいったというように腕を組む。  私は今更だが後悔していた。話したがばかりにお優しいジュディス様がお心を痛めたのかと思うと、落ち込んでいた。  だがグラース様は苦笑して、私の肩を叩く。とても穏やかな視線に、私は勇気づけられる思いだった。 「いや、自ら外に出ようという傾向は好ましいんだ。あの子にそう思わせてくれただけで将来の希望が持てる。だが、少し気になる案件もあるからな」 「子供達の連れ去りですね?」 「そうだ。奴らは身寄りのない子供を狙っている。警備は怠らないつもりだが、そのような場面に万が一あの子が居合わせたら、再び暴走しかねない」  魔力の暴走。もしも子供達のいる場所でそのような事があれば、子供達も警備の者も危険になる。そして何より、そのような事をしてしまったらジュディス様本人がとても傷つくだろう。本来は、他人を傷つける事などできない優しい方なのだから。 「親としては、あの子の意思を尊重したい。どのような経緯でもあの子が自ら人々の前に出たいと言ってくれたことを後押ししてやりたいのだが…軍を預かる者としては、危険を冒したくはない」  グラース様は大変に悩んでいる様子だった。  そして私も、気持ちは同じだった。 「…少し、ジュディス様とお話をしてもよろしいでしょうか?」  直接お話をすれば、よりジュディス様のお心が分かるだろう。そう思った私は願い出た。それに、グラース様も苦笑して「勿論だ」と応じて下さった。

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