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【日常】新緑の騎士の奮闘記(6)

 ジュディス様は少し落ち着かない様子で私を出迎えた。事が私に伝わっている事は、予測できたのでしょう。  私はゆっくりと近づいて、ジュディス様の前に立った。 「祭典への慰問を、申し出たのですか?」 「はい、あの…」 「…もしかして、私をおもんばかって下さったのですか?」  問えば、ジュディス様の肩が僅かに揺れ、同時に顔を俯けてしまう。答えはそれで十分だった。 「その……」 「有り難うございます、ジュディス様」 「え?」 「私の気持ちを、考えて下さったのでしょ?」  ジュディス様はゆっくりと頷いてくれる。その優しさに、私の胸は温かくなっていく。単純に嬉しくて。 「ルークは、母様も父様もいなかったのですよね?」 「はい」 「寂しくなかったと、言っていました」 「えぇ、寂しくはありませんでしたよ」 「私も、知りたいと思ったのです。ルークがどうして、寂しくないのか。どうして、こんなに優しいのか。私も、ルークみたいに優しくて強い人になりたいと思って、それで…」  しどろもどろになりながらも伝えてくる気持ちの温かさと大きさが、とても愛しく感じられる。私を見て、何かを変えようとしているジュディス様の成長を嬉しく思う。  気づけば私はジュディス様の手を取って、穏やかに微笑んでいた。 「ジュディス様は今で十分、お優しいですよ」 「でも…」 「…私が、必ずお守りします」 「え?」 「貴方の事は、私が必ずお守りします。どんな事があっても」  貴方の命も、その純粋な心も、必ず私がお守りします。貴方の全てを、お守りいたします。  突如ジュディス様が祭典に参加するということになり、警備は強化された。  王都付近にある教会付属の孤児院から、四十人あまりの子供達が思い思いに楽しんでいる。皆表情は明るく元気で、喧嘩をしたりもあったけれど概ね平和に過ぎている。  この祭典の目的は、親をなくした子供達を元気づけると同時に、子供が欲しい家の者がこうした子供達を養子に迎える、その様子を見る為でもある。  出生率は劇的に上がってきているが、それでも子供のない夫婦などは多い。その為、教会に預けられている孤児を引き取りたい夫婦は未だに多い。  ルークもそうだった。教会に来た裕福な夫婦が引き取ってくれて、教育と教養、そして剣術を教えてくれた。大切に育てられ、学校にも通わせてもらった。  そして今、騎士として頑張っている姿を見て本当の我が子のように喜んでくれる。この両親の為に孝行しようと思える人達だ。 「ジュディス様、こっち!」 「ジュディスお姉ちゃん、このお菓子美味しいの」 「このお菓子はリンゴを使ったお菓子で。あの、順番にお願いしますぅ」  子供達に引っ張りだこになっているジュディス様は、困った顔をしながらも楽しそうだ。  最初こそ恥ずかしそうに俯いていたが、子供達はそんな事関係なく近づいてきて遊ぼうとせがんでくる。元気な子供達に腕を引かれ、遊ぼうと誘われ、お菓子を食べて笑っている。  楽しそうに笑うジュディス様を見ると、ここにつれてきたことは間違いじゃなかったと思えた。

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