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5-でもんべいびー誕生

待望の瞬間は黎一朗の目の前で。 ぱり……ぱりぱり……ぱりん!! 「ぱぱぁ」 なんと。 すでに乳幼児の姿をした、乙女雄悪魔ルルラルとそっくりの混血子ども。 ふわふわ白金髪の上に卵の殻をちょこんと乗っけて、黎一朗を目の当たりにするなり「ぱぱぁ」と口にしたではないか。 「旦那様、リリルル、抱っこしてあげてください」 笑顔のルルラル、感動の余り声も出せずに我が子を見つめている黎一朗に寄り添い、リリルルと名づけた愛の結晶をその両腕に抱かせた。 「ぱぱぁ、ままぁ、りりるる、りりるる」 「……リリルル、男の子なのにかわい過ぎるんですけど、ルルラルさん」 「鼻は旦那様にそっくりです!」 「……あんなでっかい子が卵からいきなり産まれてくんのか」 同じ居間にて、でれでれファミリーをちょっと遠目に眺めていた千里は動揺を隠せない。 そんな彼も、今、でっかい卵を抱きしめている。 すでにこつこつ内側から音が聞こえている。 「な、なんか不安、大丈夫かな、俺、あんな子ども育てていけっかな」 「千里、心配すんな」 背中から千里を抱きしめていたソルル、人間男嫁の首筋の匂いをかぎながら、淡々とした口調ながらも優しい言葉をかけてやる。 「俺がいる」 「で、でも……だってまさか、いきなり、あんなサイズ……あっ」 ぱりぱりぱりぱり…… 卵に入っていた割れ目が一気に広がった。 千里とソルルの子ども、誕生の瞬間。 千里のみならず、甥っ子の黎一朗もルルラルも、リリルルもきょとんと見守った。 そして。 ぱりぃぃぃぃぃん!!!! 「きゃあ! なんて美しい子どもでしょう、千里様!」 「ルルラル、俺と千里の子どもだから当然だ」 「…………叔父さん」 「…………黎一朗」 悪魔は喜び、人間は真顔で視線を通わせ合う。 「みゃーみゃー!」 千里の卵から生まれてきたのは人型ではなかった。 かわいい、ガチで間違いなくかわいい、だがしかし。 どう見ても獣だ。 ネコ科っぽい獣の子ども(♂)だった。 しかも。 「名前はサラサ、ナズナ、アクアにしよう」 三匹いた。 「「「みゃーみゃー!」」」 「……れ、黎一朗」 「……叔父さん、すごいです、三つ子だなんて」 そこかよ、と心の中でかろうじてツッコミを入れた千里なのだった。 さて悪魔の血を引く混血子どもたちの主食はというと。 「おっぱいからも出ますが、あの……恥ずかしながら、旦那様……こちらのみるくの方がとっても栄養価が高いのです」

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