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「ここが新しいおうちなんだってさ」
街明かりを浴びて翼を広げていた悪魔は無言で手を差し伸べて千里を呼ぶ。
「俺、そんなとこ立てねーぞ」
カノンを下ろすと手を繋いでソルルの背後へ裸足でペタペタ歩み寄った千里。
「うぇ。ぞっとする」
「千里、お前は騒ぎ過ぎだ」
「俺はお前みたいに飛び慣れてねーの」
手すりから千里の隣へ降り立ったソルル。
ビル風に短めのさらさら白金髪がささめく。
いつもより月に近い場所で鋭いくらいに危うい魅力滴る悪魔。
千里はすぐそばでカノンがまじまじ見上げていることも忘れて、口づけの誘惑に身を委ねて……。
「ソルル、お引っ越しお疲れ様」
「「「ママ」」」
ギクリな千里が声のした方へ視線を向けてみれば。
いつの間に手すりに着地していたヒルルと、サラサ、アクア、ナズナが正装姿で猛禽類みたいに並んでいて。
深紅に統一されたバラの花束を呆然と突っ立っている千里に授け、大悪魔は、ムスッとしている我が子ソルルに微笑みかけた。
かくして悪魔だらけの新居パーティーが始まった。
正に逢魔時も酣 である。
しかしそれぞれイマイチ仲のよろしくない悪魔ファミリー、和やかムードになるわけもなく。
「パパ、ずるい」
「ママ、独り占めして、ずるい」
「……ずるい」
真っ黒な髪に白メッシュの入ったサラサと、隻眼のアクアと、大人しいナズナ、雨が降ったら即アウトだろうルーフバルコニーに置かれた長ソファに並んで座り、頻りに「ずるい」を連呼。
向かい側の長ソファに座り、鬱陶しがる千里を強引に抱っこしたソルルは弟にしか見えない我が子ら三人を睨む。
「ひるる太、よちよち」
「カノンはいつもご機嫌麗しいですね」
一人掛けソファに座ったヒルルは膝に乗っけた孫カノンの相手をしている、が、たまに千里に視線を投げかけては無駄に美しく微笑みかけてくる、で、ソルルに睨み返されている。
どうなるんだよ、このホームパーティー。
俺、血とか絶対見たくねーぞ。
「パパ、満足、させてる?」
「ママ、満足、してる?」
「な、何の話して、サラサアクア、そんなこと親に確認すんじゃねー!」
「……みるくほしい」
「いい加減乳離れしろ、ナズナ!」
人間雄母に叱られて混血三つ子はシュン……とはならずに不貞腐れる、高校生以上社会人未満のイケメン外見に反して彼らのなかみはまだまだこども、カノンとそう変わらないのだ。
「「「ママ、交尾したい」」」
「千里は俺だけのもの」
「「「ガルルルルルルッッ!!」」」
「俺がどれだけ千里を満足させてるか、今、見せてやる」
「は?」
剣呑に唸る三つ子を尻目にソルルは強張る千里に手加減なしの……口づけを。
ぎょっとして、嫌がって、呻いて、突き離そうとして。
結局は悪魔夫の舌に口内だけじゃなく体の奥底も容赦なく解されて全身を火照らせてしまう千里。
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