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16-4
「クソオヤジ……ッッ!!!!」
ヒルルの肩越しに涙ぼろぼろな千里の双眸に写り込んだのは。
黒ずくめな悪魔夫の姿。
今までに見たことのない形相だった。
牙を剥き、憤怒で双眸を燃え滾らせ、さらさら白金髪をゆらゆらさせて大悪魔を睨みつけていた。
「俺の千里から離れろ!!!!」
偉大なる父を殺しかねない勢いで叫ぶ。
実際、そうしたかった。
しかしその翼が邪魔で。
折り畳んで体内に収納しているかと思いきや、ただ人間には見えていないだけ、ヒルルの防御なる盾は広げられて一種の結界じみたものを生み出していた。
ソルルは千里の元に行くことすらできない。
優等生悪魔の自分よりも強大な力を持つ大悪魔に刃向うことができない。
ソルル。
ソルルだ。
来てくれたんだ、ソルルぅ。
でもなんか……あいつ……血、流してる?
あ、まただ。
血がぶわって。
見えないナイフで切りつけられてるみてーな。
なんで?
なんでソルルが傷ついてんだよ?
「無理をして此方に来ようとしても無駄です、傷つくだけです、ソルル」
相変わらず愉しげなヒルルに囁かれてソルルは眼球近くの片頬にまで傷を走らせながら、それでも、進もうとする。
ブシュッッ!
「ッッッッ!!!!」
目の前でどんどん傷ついていくソルルに千里の心は悲しみでいっぱいになった。
絶対的なる大悪魔の力に及ばずに千里の元へ近づくことすらできないソルルは絶望でいっぱいになった。
「あ」
「どうしました、カノン?」
「帰る」
「もう少し我輩と遊びましょう」
「帰る、帰る、帰る」
「せんりーぱぱー」
ヒルルは数世紀ぶりに驚いた。
影に預けていたはずのカノンが……目の前に現れたから。
できあがったばかりのちっちゃな翼をぱたぱたさせて、出血だらだらなソルルの周りを一周し、悪魔だから見た目に反してそんなにダメージは喰らっていないことがわかると、ぱたぱたぱたぱた。
人間も悪魔も、大悪魔の許しがなければ入ることができないはずの結界にやってきた。
「せんり泣いてるーごきぶり出たー?」
さっきまで激ドラマチックな展開を見せていたところに、いつもと同じカノンの声。
ぱたぱたカノンは驚いているヒルルの胸に着地した。
「……カノン」
「あのひるる太ーひるる太じゃなーい、からっぽー」
「……貴方は不思議なこですね、カノン」
「あああ、カノン、お前どこに、って、あ、しゃべれる! 俺しゃべれてる!? しゃべれてるー!!」
「我輩と遊んでくれますか、カノン」
「あそぶー」
「ああっだめ!! おおおっおとーさま、カノンだけはぁっっ!! てかカノン羽根生えてる!? いつの間に!!??」
「かのん、だいじょーぶ、せんり」
カノンはヒルルの胸に落ち着いてしまい、ヒルルはそのままカノンを抱きしめて。
雄母なる千里の心配も余所に二人とも離れなくなってしまった。
「あーーーーー……っっソルルぅぅッッ!!」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッ!!
ヴヴヴヴヴーーーーーーッッ!!
「ッッあっあっソルルぅ……ッおま、ぇ、ほんとだいじょぉぶ、ッ? あッ、あんっ、もッ、奥ぅッ、お前のでいっぱぃぃ……ッッ!」
似非新婚さんの寝室で繰り返される過激妊活。
「俺は悪魔だ、こんな傷、すぐに治る……千里……千里」
「あっ……あん……ソルル……っっ」
「オヤジに種付けされなかったか、千里」
お互いべったりぎゅーぎゅーし合って絡ませた下半身、いっしょに乱暴に腰を揺らす。
悪魔夫の究極巨根なるバイブペニスが人間男嫁の雄膣にずぶずぶずぶずぶ突き立てられる。
「さっさっされでなぃぃぃッッ!」
「キスは。されたか」
「あぅぅぅぅっ……され、ちゃった……ッんぶっっ!!」
むーーーっとしたソルル、大悪魔の痕跡を拭い去ろうと、緩んでいた千里の唇にぶちゅぶちゅぶちゅぶちゅ。
「んぶぶぶぶッッ……あ、あ、ぁ、あ、きてるッソルルの孕ませ汁ぅ……ッ俺にきでるよぉぉ……ッ」
「千里、千里、ごめんな、千里」
「ッッッ……ソルルだって、こんな傷だらけに……ッ」
「怖かったろ、千里」
「ソルルぅぅぅ」
見つめ合ってキスして挿入れて挿入れられて、絶頂して、また突いて、突かれて。
リビングで見えない翼を広げたヒルルは眠るカノンを撫でる。
「両親の交尾、貴方に聞かせるわけにはいきませんね」
「ちゅぅちゅぅ……」
もう一方の手を指しゃぶりされているヒルル、それはくすぐったそうに小さく笑った。
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