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「ルルラルを苛めにいくわ」
リリーは忽然と消え失せて我が家にいるべき悪魔夫と人間男嫁の二人が残された。
「千里」
歩み寄ったソルルを千里は……睨め上げる。
「こンの……ッ浮気者がッッ!」
「大丈夫か、千里」
「大丈夫なわけあるかッ!蛇ッ蛇ッ!シューシュー言ってたぞ!それに火事になりかけたじゃねーかッ!!火災保険入ってんのか!?」
「あれは幻だ」
「つーか今の誰だよ!あのゴスロリなんだよッ!なんのコスプレだよッ!?今の今まであのゴスロリと……ッいっしょに、いたのかよ……ッ?」
捲し立てるように次から次に言葉を吐き出す千里をじっと見つめてソルルは答えた。
「一緒にいた」
「ッ……」
「あれはおふくろだ」
ソルル・ルルラル兄弟の母。
大悪魔の妻君。
千里にとって……魂を狩るタイプの世にもこわ~い悪魔姑、だ。
「……おふくろとちゅーすんのかよ、どんだけマザコンなんだよ」
悪魔の倫理観、カオス過ぎんだろ。
「つーか……悪魔ってやっぱ一夫多妻?」
「多夫多妻だ」
そんなんカオス通り越すぞ。
恐怖が拭い去れずにブルブルしている千里を抱きしめたソルルは震えを止めてやるようにぐっと力を込めた。
「お前……俺以外にも……いるんじゃねーの……嫁……」
普段通り黒ずくめなソルルの胸に顔を埋めた千里はくぐもった声で問いかけた。
リリーに仕掛けられたまやかしの残像がまだ尾を引いて震え続ける人間男嫁をよしよししていた悪魔夫、きょとん、する。
「千里はおかしな嫁だ」
「ッなにがおかしーんだッ!!」
キッと涙目で見上げてきた千里をソルルは覗き込んだ。
「俺が行き来する二つの世界、俺が愛しているのはお前だけ、だぞ」
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