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「ということで、ちゃんとわからせてやるぞ、千里」 そこは寝室。 あっという間に旦那様に素っ裸にされた千里がベッドで「ううう」と情けない声を上げている。 体中に嫌という程刻まれた、うっすら赤い刻印。 悪魔夫によるキスマークだ。 あんなところにも、こんなところにも、あらまぁ、そんなところにも。 「も……っもういい! こんなん焦らしプレイだ!」 敏感な場所ほどキスマークが密集していて、ところによっては歯形もつけられた千里。 大いに反応を示している股間を片手で恥ずかしそうに隠している。 その手を簡単に退けてしまうソルル。 あーんと口を開けて、一息に。 火照っていたペニスを久しぶりに吸い上げられて千里は苦しげに眉根を寄せた。 痛いくらいに気持ちいい。 張り出たエラをたっぷり舐められ、舌先で裏筋を上下に愛撫され、先っぽをねっとりあたためられて……腰が独りでに揺れてしまう。 「も……ッもぉいい……ッソルルぅ、今すぐ……挿入れて……?」 物欲しげにひくついていたアナルに究極巨根が濃厚キスを。 悪魔かうぱぁを纏わせて奥の奥までじっくり重く突き上げられる。 「お前は俺のたったひとりの嫁だ、千里……」 突かれながら耳元で囁かれるとどうしようもなく昂ぶってしまう。 甘い堕落に飼い慣らされる。 「俺が愛してるのはお前だけ」 「ッ……ちょ、むりむりむり……ッソルル、もういい……っ!」 「お前にわからせないと」 「お、俺……っ耳まで孕んじゃう……ッ耳がバカになるっっ!」 「ばかになれ、千里」 きつく抱きしめられて、雄膣に何度も種付けされて。 延々と愛なる言葉を囁かれて。 「ソルル……ッ好き……っ俺も好きぃ……ッッ!!」 ホイホイつられた千里。 そして。 「千里、なんで泣く?」 「せんりー、たまごー、このたまごすっごくおっきい」 五つ目の卵を優しく抱きしめた千里。 背後からソルルに抱きしめられて、カノンは卵にぴたっと片頬をくっつけて何か音がしないかと耳を澄ませていた。 「……嬉しーから」 「嬉しいと泣くのか。千里は変な嫁だ」 珍しく笑顔を浮かべたソルルに千里も笑い返して涙を拭った。 「うっせぇ、悪魔」 「音がするーカリカリ音がするー」 初めて目にする巨大卵に興味津々、カノンは一日中つきっきりでそばを離れようとしない、寝るときも孵化を待つ親鳥のように両腕に抱いて眠りについて。 「ばかのーん、いい加減起きろー」 ある朝、キッチンで朝食を作りながら千里が呼びかければ、バタバタ騒がしい足音と共に寝室からカノンが現れた。 「せんりー見て見てっ」 「げ! カノンっ、どっから野良猫拾ってきたんだよ!?」 どこからどう見ても真っ黒な猫、な生き物を両手で抱えていたカノンに千里はしかめっ面に。 するとカノンはぶんぶん首を左右に振った。 「拾ってないよーたまごから産まれたのー」 「う……産まれた……? え……?」 うそだろ。 俺、ただの猫、産んだの? もちろん悪魔の血を引く混血児、ただの猫じゃあ、なかった。 「ままにゃん!ぱぱにゃん!」 「しゃ……ッしゃべった……ッ!俺、喋る猫産んだのかよッ!?」 「かわいーよしよし」 「にゃー!」 「これでカノンも立派な兄だ、よしよし」 まさかの猫誕生に動揺を隠せない千里だったが、よしよしが連鎖しているのほほん家族を見、だんだん落ち着いてきた。 そ、そーだな、サラサ・ナズナ・アクアだって最初はネコ科っぽい獣の子どもだったもんな。 俺、悪魔の嫁だもんな。 いちいち小せーことにビックリしてたらキリないよな! 「きひひっ、ままにゃん、これからおせわになりますにゃ!」 「すげ……産まれたばっかでもうしっかりしてる」 「俺と千里の子どもだから当然だ」 「にゃんにゃんっにゃんにゃんっ」 「カノン、にゃんにゃんじゃない、お前の弟だ」 裏逢魔野家に新しい家族が加わった、記念すべき朝、だった。

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