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19-カノン、はじめての悪魔界訪問
裏逢魔野家にカノンのお部屋ができた。
「今日からここがお前の部屋だぞ、カノン」
「カノンぼっちゃま、ど、どうでしょうかっ?」
「俺とルルラルさんでインテリア選んでみたんだけど」
千里と一日かけてオモチャを見たり試食を食べたりしてデパートで遊び回り、自宅へ帰れば、ルルラルと黎一朗に出迎えられて。
初めて自分の部屋に案内された。
何ともかわいらしいカラフルなコーディネート。
ヌイグルミやオモチャがいっぱい入ったカラーボックス、他にも積木やらブロックやら、極めつけは入って遊べるこども用室内テント。
それまで千里の手をぎゅっとしていたカノンはルルラルと黎一朗の片手をそれぞれぎゅっとした。
「るるらるーれいいちろーありがとー」
その日の夜。
カノンはふかふかベッドの上で千里に絵本を読んでもらっていた。
「王子様はわるーい悪魔と対決しました……お姫様を守るために……ふわぁ」
欠伸を連発する千里に絵本を読まれていたらカノンまで眠たくなってきた。
リビングの方から「きひひひひっ」と弟カフカの笑い声が時々聞こえてくる。
うつらうつら、重たくなる瞼。
いつの間にかカノンは眠りに落ちた。
「そして悪魔は王子を討ち倒してお姫様も都も手に入れたのでした」
ふと目が覚めた。
瞼を持ち上げればベッドに突っ伏して熟睡している千里が視界に入った。
「めでたしめでたし」
「あーひるる太ー」
自分のすぐそばで横になって絵本をゆっくり閉じたヒルルにカノンはおめめを丸くした。
「こんばんは、カノン」
「こんばんはー」
「素敵なおへやですね」
「そうですねー」
ぐーすかイビキをかいている千里にふわふわタオルケットをかけてやり、カノン、ヒルルにぴたっとくっついた。
父親ソルルに瓜二つの祖父ヒルル。
大悪魔の彼は孫カノンに優しく微笑みかけた。
「今宵はいい夜です、カノン」
宜しければ今から我輩とお出かけしませんか?
日頃、雄母の千里から勝手に一人でどこか行くな・危ないところには行くなと注意されているカノン。
熟睡中の千里をちらりと見、ヒルルをちらりと見、そして。
あ。
かのん、今、夢のなか。
だから、せんり、ごめんね。
本当に夢だと思っているのか怪しいカノンはヒルルに抱っこされて真夜中の外出へ。
満月の夜。
誰に知られることなく人間界を後にして。
ふしぎなふしぎな闇の世界へ。
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