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翌朝。 今日は一体どんなナリをしていやがるのかと身構えてリビングに向かった千里は拍子抜けした。 「カノン、今日はえらい早起きだな」 ソファにちょこんと座ったパジャマ姿のカノン。 世にも怪しげな黒い生き物は見当たらない。 千里はきょろきょろと辺りを見回しつつ第4子の隣に腰かけた。 「カフカどこ行ったんだろ?」 「……」 「朝ごはん、どうすっか、シリアルがいい? ホットケーキ? おーい、カフカぁ、どこいんだよ?」 「きひひひひっ」 思わずギクリとした千里。 カフカの笑い声を奏でたカノンを穴が開くほど見つめていたら。 「せんりーおはよー」 本物のカノンが子供部屋からやってきた。 千里はあほみたいに本物カノンと自分の隣に座るカノンを何度も何度も見比べる。 そんな人間雄母にカノンは教えてやるのだ。 「せんりー、それ、かふか」 「きひひひひっ!」 「……マジか」 カフカは黒い生き物に変化するだけではなく一度目にしたものたちを正に完コピすることができる、らしい。 ダイニングテーブルに着いてホットケーキをぱくぱく食べるカノン、その隣でのんびり寛いでいるカノン版カフカ。 向かい側に座って両頬杖を突いた千里はこどもみたいに興味津々だ。 「カフカ、すげーな、じゃあテレビで見た芸能人とかにも変身できんの?」 「きひひひひっ」 「せんりー、あとでじっけん、てれびてれび」 「きひひひひっ」 「うぉぉっ、今一番女子がなりたい顔ッ、台詞言って、ドラマと同じ台詞言って、カフカ!?」 「きひ……この雄豚ども、二足歩行なんて許した覚えないわよ?」 「わーーー!すげーーー!」 「こっちのちゃんねるはー?」 「げ!カノンッ、昆虫番組はやめてーーーッ!」 カフカの能力検証に明け暮れた午後。 人気ナンバーワンのグラドル女子になってのんびりしているカフカを前に千里はデレデレ、カノンはソファでお昼寝している。 「しっかし面白いな~飽きないな、コレ」 まだまだ遊び足りないがそろそろ夕飯の準備にとりかからなければならない。 「よっし、続きは明日にしよ、戻っていーぞカフカ?」 「きひっ」 千里が頭ポンしてやるとカフカは瞬きよりも速くグラドルから別の姿へ。 「え」 千里は思わずポカーンする。 お昼寝から目覚めたカノンはしょぼしょぼするおめめを擦りながら弟カフカの姿に笑った。 「せんりがふたり」 「お、俺だ……俺がいる……」 「ままにゃんなり!」 「あれ、俺、こんなとこにホクロあった……?」 自分の姿を完コピされた千里はカフカをまじまじ見つめた。 見つめている内に他愛もない悪戯を思いついた。 ソルルの奴、騙しちゃお。 以前、まんまと騙されたお返しをしてやろうと悪そうな笑みを浮かべた……。

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