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小さいサイズに戻って翼もなくしたカフカに案内されて、ナイショの抜け道を通り、城の内部へ。 前回に訪れたときは使用人がうろつく程度で閑散としていた通路。 しかし今夜は違っていた、着飾った客人が様々な仮面で顔を彩って行き来している、髪飾りも耳飾りも首飾りも、ドレスやスーツも、靴さえ、黒、黒、黒、全て真っ黒。 もちろん誰も彼も悪魔だ。 「法事みたい」 「しっ。こっちにゃ」 四つん這いで天井裏やら抜け穴やら、物知りカフカに案内されて、誰にも見つからないよう城の中をぐるぐるぐるぐる。 「ストップにゃっ」 ある小部屋の前でカフカは立ち止まった。 男女のものと思しき衣装が通路に脱ぎ捨てられていて、細くできていた隙間から室内を盗み見した黒猫は意味深に「きひっ」と笑うと。 男物はサイズがやたらでかいので女物の衣装を切るようカノンに言った。 持ち主が困ると、誰かいるのと、カノンが部屋を覗こうとすれば「カノンにはまだ早いにゃ」と弟のくせにしれっと兄の目を塞ぎ、華奢な手をとり、女物の衣装を小脇に抱えて隣の小部屋へ。 せっせとカノンにゴシック風なミニドレスを着せてやって。 二本のリボンを後頭部で結び合わせてベネチアンマスクもつけてやって。 やたら厚底のヒールローファーも履かせてやった。 「ばっちり変装できたにゃ。どこからどう見ても女の子にゃ」 最初の性別は♀だったカノン、悪魔界ではあるあるパターンというまさかの性転換で♂になったわけで。 そのせいなのか成長カノンは非常に中性的だった。 千里はぱっと見で男!とわかるが今のカノンはとてもあやふや。 黒ゴスな出で立ちがよく似合っていた。 「ヒルル様を探そうにゃ?」 自分の祖父を様付けで呼ぶカフカにこっくん頷いて再び通路に出たカノンだったが。 ヒルルへの道はなかなか遠かった。 「お」 「へぇ」 「……かわゆい」 吸血鬼みたいな出で立ち、ファントムの仮面、何もかもお揃いの兄の三つ子にばったり遭遇してしまったり。 「かわいらしいコ、この子らの遊び相手になって」 二匹の蛇をその身に纏わせた、蝶マスクが恐ろしく似合うゴスロリ本家のグランドマザーリリーにばったり遭遇してしまったり。 その度に悪魔方家族と面識のないカフカが「こやつめは上級悪魔に仕えるへっぽこ劣等生でございます、身分低い故、身分高きそちら様方と会話など滅相もございません」なんて適当に言ってぽんやりしていたカノンに先を急がせた。 「おっきくなったカノン、だれもきづかない」 「変装のおかげもあるにゃ!」 ちらりと覗いた大広間では仮面楽団が奏でる夜想曲に合わせて悪魔達が優雅に踊っていたり。 「あっちはどうにゃ」 悪魔の棲む城なのに天井に夥しい亀裂が入った朽ちかけのチャペルがあった。 中を覗いてみれば、祭壇ではガスマスク燕尾服バンドが激しいエモなチューンを演奏中、席に着いた……いや、立ち上がった悪魔達はヘドバンやらダイブしまくり、ぎゃんぎゃん騒いでいた。 鼓膜をつんざくようなうるさい演奏に両耳を塞ぎかけたカノンだが。 「あれー」 この声。 ぎゃんぎゃん音がうるさいけど、この声。

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