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「兄にゃ!すごいすごい!おっきくなってるにゃよ!」
「わ。ほんとだーなにこれーかのんのおっきい」
「だーーーーーッ!!やめろさわんなそこさわんな!!」
一夜にして自分より、いや、悪魔夫のソルルよりでっかくなったカノンに朝一から仰天した千里だったが。
「こぼしてんぞ、カノン、でっかくなってもカノンはカノンだな」
ホットケーキをナイフとフォークでキコキコ切り分けてはパクパクしている溌剌カノンの口元を小まめに拭っている。
すっかり雄母している、貫禄もついてきた、ぱっぱらぱーだったのが嘘みたいだ。
これまでの子育てで様々なハプニングを経験してきたおかげで混血こどもらの親としての順応性が自然と養われたらしい。
「2メートルはあるんじゃね?」
「もぐもぐ」
「サラサ・アクア・ナズナどころかソルルよりでけーもんな」
「せんりーおかわりー」
「へーへー」
ちなみに現在カノンは腰にバスタオル一枚である。
サイズの合う服がないのだ。
千里の服を着せようとしたら「きついー」と苦しそうだったので止む無くバスタオルを巻きつけた。
「もうずっとこのままなのかな。どー思うよ、カフカ?」
ダイニングテーブルに着くカノンのお膝にちょこんしていたカフカは首を傾げた。
「このままかもしれにゃい、ちっちゃくなるかもしれにゃい」
「だよなーハッキリわからねーんだよなー」
カウンターの向こうで追加分のホットケーキを焼き始めた千里は苦笑する。
「ま、何とかなるか」
「なんとかなるにゃ」
「なるー」
「なるでしょう」
ん。
最後の、誰だ?
一先ず生地を引っ繰り返した後、そろーり肩越しに振り返ってみれば。
「お邪魔しています、千里さん」
息子であるソルルと同じ神出鬼没ぶりで大悪魔のヒルルがいつの間にやらダイニングテーブルに何食わぬ顔で着席していた。
相も変わらず黒基調の上下スーツでビシッと決めている。
ソルルにはない優雅さを備えた、今日も健在であるその美しい微笑。
「ひるる太」
斜向かいに不意に出現したヒルルにカノンはおめめパチパチ。
ベースは千里を受け継いでいるが各パーツは雄母以上に端整に仕上がったその外見。
スーツでも着せれば男前美形っぷりが格段に増すだろう、バスタオル一枚でもなかなかの魅力に溢れてはいるが。
容姿も力も人間離れした純血悪魔より親近感の湧く人間寄りの生き生きとした清々しさがあって。
月夜よりも燦々と輝く太陽の元が相応しそうな溌剌さ漲る健全パーフェクトぼでぃ。
「また見違えましたね、カノン」
そんなカノン、ヒルルに微笑みかけられて。
ばったーーーーーん!!
「うおっなになにっ? どしたっ、ッ、ちょっ、なにやってんだカノン!?」
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