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23-ハロウィン・ワン!
その日はハロウィンだった。
「まさか一晩中テレビ見てたのか、カフカ!?」
朝、主寝室から欠伸交じりに出て来てみればリビングから何やら音がするので覗いてみると。
ソファにちょんと座った黒猫版カフカがテレビ鑑賞していた。
「こらっ、テレビ見過ぎだぞ、目ぇ悪くするし! 電気代もったいねーだろ!」
うまい具合にバランスをとってソファに座っていたカフカはまだ顔も洗わずにプンスカしている千里に向かって「きひひっ」と笑い、言ったのだ。
「払ってるの、ぱぱにゃよ」
そりゃあ自分は元ぱっぱらぱー。
定職にもつかずに日々パチンコ三昧だった、貯金なんて当然あるわけがない。
今、自分の口座にたんまり入っているお金はソルルが生活費として振り込んだものだ。
この高級高層マンション最上階ペントハウスだってソルルが用意したものだ。
だからってそんな言い方ねーだろ、カフカの奴!
「にゃっ!!!!」
プンスカ千里にリモコンを奪われるなりテレビを消されてカフカは大袈裟なくらいびっくりした。
「まだテレビ見てるにゃっ」
「もう十分見ただろーがっ」
「にゃーーーーっ」
リモコンを取り返そうとちょいちょい前脚を出してくるカフカ、とられまいとリモコン持つ利き手を頭上高くに上げる千里。
傍目にはとってもほのぼのした光景だが実際はどこのご家庭でもよくある親子喧嘩だ。
リモコンを死守している千里のもう片方の手にカフカは。
がぶッッッ!
「いだーーーーーッ!」
「ふわぁ……どしたの、せんり、かふか」
「カッ、カフカにかまれだーーーッ!」
そう叫ぶ千里の手にはまだカフカが噛みついていて空中でブンブンされている。
ブランケットを抱いてリビングにやってきた小カノンは「わぁ、おもしろーい」と、とろんしていたおめめをたちまち輝かせた。
十分後。
「ままにゃ、ごめんにゃ、やりすぎたにゃ」
「こっちこそ、びっくりし過ぎてごめんな、カフカ。サラサらの種付けもどきに比べりゃーかわいいもんだったよ」
すぐに仲直りした千里とカフカ。
今日もいつも通りの一日が流れていくのかと思いきや。
数時間後。
「うわぁぁぁぁーーーーーッ!!」
リビングでパズルをして遊んでいたカノンとカフカは目を見合わせた。
「なんだろ?」
「きひひ」
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