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「ボク、あっち行くにゃ」 街に着くと勝手に単独行動に出たカフカ。 夕闇に際立ち始めたジャックランタンが並ぶ街角、ヒルルの肩から急にぴょーーんするなりさっさと裏通りへ駆けていってしまった。 「あれーかふかー?」 「カフカは逞しいですね。探究心に富み、恐れを知らないようです」 「ひとりでだいじょーぶ?」 洒落た街灯下に束の間佇んでいたヒルルは腕の中で弟を心配するカノンに頷いてみせた。 「貴方と同じ、我輩の血を引くものですから。カフカの好きにさせてあげましょう」 足を進めれば横を過ぎゆくショーウィンドウはオレンジと紫を基調にディスプレイされていて。 お菓子屋さんの店頭に並べられた、カボチャやおばけをモチーフにした色とりどりのクッキー。 仮装した若者やこどもたちが楽しそうに舗道を行き来している。 時々、千里に連れられて遊びにきていたカノンは様変わりした街並みに目をぱちぱちさせた。 「何か食べたいですか?」 ヒルルの問いかけも耳に入らないくらいハロウィン風の飾りつけを見回すのに夢中になる。 特に仮装した人々にカノンは興味を引かれた。 ヒルルはいつもと同じ黒ベースのスーツでビシッと決めている、一方、お出かけ用の服を着たカノンは白い長袖シャツにサスペンダー、チェック柄のあったか半ズボンにハイソックス、革靴を履いていた。 「カノン」 なかなかな勢いでぐるんぐるん辺りを見回しているカノンにヒルルは微笑が止まらない。 「ほらー」 「はい? どうしました?」 カノンが指差した先にいたのは家族連れだった。 母親に手を引かれた小さな女の子が天使の仮装をしている。 背中には白い羽。 「あっちもー」 次に指差したのは十代と思しき少女の集団だ、魔女コスプレで統一しているらしい、背中に羽を背負う者もいた。 「かのんもーかのんもー」 「カノンも? どうしました?」 腕の中で落ち着きのないカノンに困るでもなく、ヒルルは至って落ち着いた様子で明らかにテンションの上がっている彼にそっと首を傾げた。 ヒルルのネクタイをむんずと掴んでカノンは言う。 「かのんも、ぱたぱた、だすー」 ばさぁっっっっっ テンションの上がったカノンはヒルルに抱っこされた状態で……ちっちゃな翼を背中に翻した。 たまたま近くで目撃していた、海賊の仮装をさせられた犬がビックリして吠えまくった。 飼い主に注意されてもキャンキャンキャンキャン、余程驚いたに違いない。 「あーごめんねーびっくりしたの」 降りたがる素振りを見せたのでヒルルが舗道に着地させてやればカノンは迷わず吠える犬の元へ。 「かのん、ぱたぱた、だしたの、こわくないの、へーき、だいじょーぶ」 カノンにナデナデされて海賊チワワはクーンと鳴いた。

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