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何となく犬の鳴き声に意識を掬われてそちらに目を向けた通行人らはカノンの背に生えた翼を二度見、いや、確実に三度見はした。 「すげぇ、ホンモノみてぇ」 「うちの子にもあんなのつけたいっ」 今夜はハロウィン。 ちょっとふしぎなことは一夜の悪夢が生み出したTrickとして見過ごされる。 「あの子さぁ……微妙に飛んでない?」 かなりふしぎなことは……そうもいかない。 「あれー」 低空飛行していたら速やかに抱っこされた。 カノンがぐるんと見上げれば長い人差し指を唇前にすっと立てて「カノンが飛べることはコチラでは秘密なのです」とヒルルは囁いた。 あ、そっかー、ほかのひとにはナイショ、ナイショ。 「すみませーん!!」 顔と顔を近づけていたヒルルとカノンがほぼ同時に視線を向けた先には。 「〇〇テレビ局の〇〇番組の者なんですが! よろしければインタビューさせて頂きたいのですが!」 ハロウィンの街を取材に来た撮影クルーがいた。 「顔出しとか問題ないでしょうかっ? それにしてもその羽っ、すっごくリアルですよねっ!? 海外で買われたとか?」 「じまえー、これ、かのんのじまえー」 「ふふふふっ! かわっいいお子さんですねー!」 「カノンは我輩の孫なのです」 「孫ッッ!? えッ……あッお孫さんッ、それは失礼しましたぁ……あはは、お父様も、じゃないわ、おじい様もお言葉とか、ハロウィン向けにされて、とっても似合われてますね! ソチラは吸血鬼の仮装ですかっ?」 「ぱたぱた」 「カノン」 「わーーーーッこれ、動くんですかぁ? すごーーい!」 「ぱたぱた、ぱたぱた」 「……え、え、え、これどういう構造……でしょう? シャツについてる……? シャツの下から……生えてる……? ……………………あッ! 特殊メイク(?)ってやつですねーー! すごーーい!」 「すごーーい」 「あら、真似されちゃった! ふふふふっ! あ、貴重なお時間すみませーん、ご協力ありがとうございましたぁ!」 撮影クルーが去ると腕の中でまだぱたぱたしているカノンにヒルルは微苦笑した。 「すごーーい」 「ええ。まるで嵐のようでしたね、カノン」 「おなかへったー」 「では美味しいものを食べに行きましょう」

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