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「サラサ様、アクア様、ナズナ様にゃっ」
「なんだ、お前、悪魔か」
「どっかで見たよーな」
「……この間の舞踏会で、あの、かわゆいコのお供、してた」
ナズナの言葉にサラサとアクアはクレープを喉に詰まらせそうになった。
「ぐふッッ、そうだッ!」
「ごふふッ、あのコもいるのか!?いるのか!?」
「……きょろきょろ」
サラサの足に両前脚を乗っけて背伸びし、三つ子の顔を順々に見比べていたカフカは「きひひっ」と笑った。
「デート中にゃ」
「「「がーーーーん」」」
「お邪魔猫にはなりたくないからボクは抜け出してきました」
街角のベンチで喋る黒猫と普通に会話しているイケメン三つ子に周囲の通行人は興味津々だ。
「あれ、撮影?」
「どっかで隠し撮り?」
人間界で注目されることに慣れている三つ子は気にするでもない、クレープを食べ終えると次はアイスクリームを買いに露店へ向かった。
とことこ尻尾を立てて後をついていくカフカ。
トリプルアイスを買ってベンチに戻り、恐ろしく同じペースでぱくつく三つ子から離れようとせず、じぃぃっと面白そうに眺めている。
「なんだ。見てもやらん」
「サラサ様。ボクは食欲が欠けてございます。だからアイスクリームいらないにゃ」
「お前、名は?」
「カフカでございます、アクア様」
「……なんでずっとついてくるの?」
アクアのお膝にちょこんしていたカフカは「お三方にはこれといったお相手がいらっしゃらないので、お邪魔猫にならないと思って、くっついてるにゃ、ナズナ様」と「きひひ」交じりに答えた。
「嫌味な奴め、こうしてやる」
「にゃーーっ」
「自己中サラサは弱い者イジメが得意だ、感心だ」
「根暗なアクアめ、こうしてやる」
「やーめーろ」
「……ケ、ケンカしないで」
アイスクリームを完食したサラサ・アクアが取っ組み合って頬を抓り合い、引っ込み思案のナズナは片頬を抓られたカフカを抱いて涙目になる始末。
するりとナズナの腕を擦り抜けたカフカは取っ組み合う二人の肩をポンポンした。
「お二方、ほらほら、遊びましょう、せっかくのハロウィンです、楽しむにゃ」
どこか親しみやすい懐かしい匂いのするカフカ。
互いの両頬を全力でぎゅうぎゅうしていたサラサ・アクアは何となく怒りが削がれて同じタイミングで手を離した。
「ほらほら、行きましょうっ」
そうして黒猫カフカに案内されるがまま賑やかな街の探索へ……。
「「「なんだここ」」」
カフカに案内されて三つ子がやってきたのは……紛うことなきクラブだった。
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