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重低音がダムダム、ダムダム、ミラーボールがキラキラ、キラキラ、地下のダンスフロアで思い思いに踊る人、人、人。
本日はハロウィンということで仮装した男女が多い、きゃあきゃあはしゃぎながら写真をとってはSNSに即UPしているようだ。
初めてクラブを訪れた三つ子は爆音流れるハッピーでトリッキーで正しく酔狂な空間をぐるりと見回した。
「おじい様がたまにしてる演奏会みたいだ」
「でも、誰も楽器、弾いてないぞ」
「どこから……音楽、流れてるの?」
ナズナの懐に隠れたカフカは一度来てみたかったクラブを楽しげに観賞している。
とりあえず空いていたカウンターに着いた三つ子。
すると。
「ねぇねぇ、これどーぞ!」
「おにーさん、かっこいいからおごってあげる!」
「すげー男前、三つ子って初めて見たから、ハイ、記念に!」
寄って集って三つ子に酒を差し出してきた気分上々なる酔っ払い客。
「なんだこいつら、悪魔か?」
「いいや、違うぞ」
「……くんくん……」
丁度喉も乾いていたことだし、グラスをそれぞれ手にし、全く同じタイミングで一気に飲み干した三つ子。
「すごーい、三人同時に空にしたぁ」
「ほらほら、もう一杯!」
「いい飲みっぷり!」
ノリのいい仮装客にホイホイとグラスを差し出されて次から次に空にしていく。
次第に酔いが回り出して。
やんややんやな周囲の客よりも気分超上々、なんだこれすげー楽しい、こんなパラダイスが人間界にあったのかと、脳内ぐるぐるぐるぐるぐるるるる……。
「「「グルルルルルル!!!!」」」
酔っ払って一斉に獣化した三つ子。
どう見てもライオンにしか見えない、しかし真っ黒な毛並み、美しいたてがみをさらりと酔狂空間に靡かせて思いのままに音楽を劈 くほどの咆哮を上げた。
たちまちクラブにいた人々はパニックに陥って逃げ惑う……かと思いきや。
「ひょーーー!!すげぇ!!」
「あの仮装ぱねぇぞ!!」
「リアル過ぎ!!リア獣!!リア獣!!」
べろんべろんな客達は大盛り上がり。
手に手にスマホを掲げてダンスフロアを颯爽と駆ける三つ子を激写激写、しまいには動画撮影まで始める者もいて、興奮は最高潮に達した。
誰かの忘れ物であるシルクハットの内側に隠れてカウンターから眺めていたカフカは「きひひ」と笑いが止まらない。
「兄にゃんたち、楽しんでるにゃ、ボクも楽しいにゃ」
ミラーボールにこぞってじゃれく三つ子兄を少し遠目にハロウィンの一夜を堪能する末っ子なのだった。
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