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27-2
『ソルルですか? 誘いましたが仕事で無理とのことでした』
ジョーカー扮装のピエロから風船をもらって得意げドヤ顔な三つ子。
「おれのが一番っ、一番大きいっ」
「サラサの、割ってやる」
「……ケ、ケンカしないで」
武装した戦馬が嘶 くメリーゴーランド沿いのベンチ。
悪夢空間にすんなり溶け込んでいる三つ子は上機嫌ながらもお馴染みの小競り合いを繰り返す。
「アクア、さっき鏡壊した、ビビッてた、ださい!」
「お前だって壁壊した!」
サラサとアクアが言い合い、おろおろするナズナ。
隣のベンチでぐったり気味な千里は注意するのもさぼって放置している。
「ママー……」
やってきたナズナをヨシヨシしていたら、サラサとアクアが「「ずるい!」」と二人一緒にやってきて、また三方向からぎゅうぎゅうぎゅう……。
「ママ、あれ乗ろ!」
「あの箱の中、入ってみたい!」
「……ママ……ママ……」
つ、疲れた。悲鳴上げ過ぎて疲れた。
それにこいつらでけぇ、甘えたな年頃にしてはでか過ぎる。
やっぱ俺にはカノンがちょーどいい……。
「俺、ここで待ってっから」
頭を順々に撫でてやれば気持ちよさそうに喉をグルグルさせて「「「うん!!」」」と三つ子は揃って返事をした。
イカサマ団長率いるサーカス団のテントが風に波打つ。
墓守が逃げ出してゾンビで荒れ放題のリビングデッドセメタリー。
黒傘を差したノスフェラトゥが夜を恋しがって彷徨い歩く。
「三つ子ちゃーん」
小競り合いしつつも三人揃って歩いていた三つ子は<ナイトメア>で初めて戦慄を味わった。
「追っかけてきちゃった」
おっかなびっくり振り返れば。
「いつもよりはしゃいじゃって、可愛い。そんなにあのママが好き?」
三つ子の天敵ソドムがニターリ笑って立っていた。
「ボクの母上様の方が何千倍もお美しいけどね」
三つ子が手にしていた風船が同時にふわり、茜色に染まり始めた空へと上っていった……。
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