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グルメフロアを脱した三つ子は通路に連なる行列を見つけた。 「人、人、人だらけ、これってお祭りか!?」 「映画だ、映画館、忘れん坊サラサめ」 「あ……この間おじい様と行ったやつ……」 大悪魔ヒルルに一通り人間界について学んでいた三つ子は宿題のことも忘れて行列に興味津々、最後尾についてしまった。 前回よりも高い金額にお財布係のアクアは「?」と思ったものの然して気に止めず、前回にはなかったメガネにナズナもキョトン、時と場合によるのかと、とりあえず腰を下ろした。 「どっちの肘掛もおれの!!」 サラサはなーんにも気にせずに二人の間にどーーんと座った。 ちなみにこのシアターは4DX仕様だった。 通常の映画しか見たことがない三つ子、当然、初体験であった。 「な、なんか変だよ、アクアぁ、イスが動いてるよ……?」 「冷たっ、雨っ? 外じゃないのに雨降ってるぞ……っ?」 未体験体感型アトラクションシアターにあたふたするアクアとナズナ、一方でサラサはと言うと。 「くんかくんか! いい匂い! ごはん食べたい!」 食事シーンになるとリアルな匂いに興奮し、そこにないご馳走を掴もうとしたり、迫力満載の戦闘シーンでは左右のアクアナズナにしがみついたり、それはもう全身全霊でフルに楽しむ始末で。 「げ!」 「あっ、サラサ……っ」 興奮する余り獣化した。 怪獣が暴れ回るシーンで我を忘れ、咆哮を上げ、シアター内をガウガウ駆け回った。 「うわッちょッ迫力ありすぎ!」 「あれっ俺のポップコーンはっ?」 「めっちゃ間近で息遣い聞こえた~すげ~!」 「アクアぁ……」 「もう知らん。みんな映画に夢中だ。ほっとく」 漆黒のタテガミを振り乱して元気いっぱいシアター内を駆け回るサラサを放置することにしたアクアとナズナなのだった。 SNSで「今日見た映画やばかった!」「迫力パない、めっちゃオススメ」といった高評価が流れ始める頃。 「「「どうしよう」」」 映画で綺麗さっぱり忘れていた宿題の存在に三つ子はどんよりしていた。

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