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ヒルルが用意していたフォーマル一式に着替え、千里は照れくさそうにしながらもソルルと出かけていった。
「さて、なにをして遊びましょうか、二人とも」
ロングコートの裾を床に広げてしゃがみ込んだヒルルが尋ねれば。
あれだけヒルル好き好きだったカノンのはずが、反応ゼロ、相も変わらず輪っか繋ぎに没頭している。
「カノンは折り紙遊びに夢中なようですね」
「ヒルル様、ボクはお邪魔虫になるからどっか行くにゃ」
「できたーーーー」
ヒルルとカフカは目を丸くした。
色とりどりの輪っかを繋ぎ合わせてループ状態にしたカノンは、それまでガン無視していたヒルルの方を向くなり、ばさりっっ。
「ひるる太、メリークリスマス、プレゼント」
カノンは折り紙の首飾りを大悪魔ヒルルに捧げた。
捧げられたヒルルはあんまりにも愛おし過ぎて、おんぶされているカフカごと、カノンを抱っこした。
「メリークリスマス、カノン」
「あそぼー、ひるる太、かふか」
「何をして遊びましょう」
「かくれんぼー」
「それはいつもしてるにゃ、今日はクリスマスにゃ、特別な遊びがいいにゃ」
「とくべつ」
「特別と言うと、たとえば?」
「にゃにゃにゃっ」
ヒルルに尋ねられてカフカは腕組み、しばしヒゲをピコピコさせていたかと思えば。
「きひひっ。おもしろい遊び思いついたにゃっ」
第5子末っ子悪魔のカフカには完コピ能力が備わっていた。
一度目にしたものに姿を変えられることができた。
そんな能力を利用して思いついた遊び。
兄のカノンに楽しんでもらいたいという純粋な気持ちで、まぁ多少の悪戯心はあったが、大それた悪意なんてこれっぽっちもなくて。
「ふぇぇ」
まさかカノンが泣き出すなんて予想もしていなかった。
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