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33-謎のでもん現わる
「カノン、そんな先行くなっ、余所見して走ったら転ぶぞ!」
おにゅーのニット帽子をかぶったカノンは千里と一緒に動物公園へ遊びに来ていた。
平日の昼下がりで入場者数はまぁまぁ、空は青く澄み渡って快晴、ぴゅうぴゅう吹く風は冷たいが頬に心地いい。
「せんりー、のろまー、早くー」
「お前はホントいつでも元気いっぱいだな」
自ら進んでお留守番を買って出た末っ子カフカを自宅に残し、初訪問となる広い園内を二人でうろちょろ見て回る。
「見てー、おさるさん、うききー」
「ぶっちゃけ猿ってウキキって鳴くか?」
「ぴょんぴょん、うさぎさん」
「めっちゃ地団駄踏んでっし、情緒不安定じゃねーの」
ふれあいコーナーでカノンははしゃぎ回る。
相性がいいのか、小動物のみんな、小さな手に大人しく抱っこされたり擦り寄って甘えてきたりした。
最初は千里も周囲にいた保護者の方々も微笑ましそうに眺めていたが、お昼寝していたコまで飛び起き、ふれあいコーナーにいた全ての小動物たちがカノンの元にわんさか集うと、ざわ……ざわ……し始めた。
「えーと、カノン、独り占めしちゃだめだろ」
さすがに慌てた千里に抱っこされたカノンは手を振って小動物たちにバイバイした。
「げ!! ポケットにモルモットいる!!」
「カノンのポケット、おうちにしてる、おひっこし」
「ウチのコのポケットへの不法侵入はお断りです、うわぁ、こっちにも入ってんじゃねーか」
カノンが羽織るダッフルコートの全ポケットに勝手に入り込んでいたモルモットのこどもを巣箱におっかなびっくり戻しつつ、千里は、思う。
カノンが悪魔の血を引いてっから寄ってくるのかな。
そもそも、卵から産まれてきたし、ちっちぇ頃の本人は動物まんまだったし、そういや性転換したんだったよな。
でも悪魔だぞ。
むしろ逆に怖がられそーだけどな。
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