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歌うまな吸血鬼×声がいい青年

歌うたいの吸血鬼がいる、そんな噂が巷で騒がれていた。 そんなバカバカしい話があるかと路上ライブをしている俺は鼻で笑っていた……その歌声を聴くまでは。 「あっ……はぁ、あぁ……」 「めっちゃええ声やわ……もっと鳴いて」 さっきまで歌っていたそいつはそうつぶやいたあと、チュプチュプと俺の首筋に吸いつく。 「味はええし、声はそそられるし……アカン、吸い尽くしてまいそう」 ペロッと首筋を舐めたあと、そいつは俺の正面に来てニコッと笑った。 俺は抵抗を示すために、そいつのことをギロッと睨んだ。 「その瞳でずっと俺のこと見てや」 そう言ってそいつは俺のことを見下すようにスッと目を細める。 すると、俺のからだは石のように固まった。 「アカン、魔眼なの忘れてたわ……ごめんなぁ」 そいつはアハハハと嘲笑うように笑った。

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