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死にたい吸血鬼と生きたい青年

「つ〜かまえた!」 1人でふらふらと歩いていると、後ろから力強く抱きつかれた。 「な、なに?」 何が起こったのかわからないけど、無我夢中で身体を動かして離れようとした。 「暴れても逃がさへんで〜」 そう言って、そいつは僕をお姫様抱っこして高く飛んだ。 そいつの顔を見ると、濃い色で綺麗な顔だった……チラリと鋭い八重歯も見えた。 「どこがええかなぁ♪」 ピョンピョンと建物と建物の間を飛んでいきながら、彼はジュルリと舌舐めずりをした。 「あっ、ええ隙間はっけ〜ん!」 ニヒヒと彼は笑って、一気に急降下した後、ストンと地面に降り立った。 あまりの状況の変化についていけない僕は意識が朦朧としていた。 「じゃあ、いただきま〜す」 彼はゆっくりと僕を壁に寄りかかるように置いて、ガブッと噛みついてきた。 痺れるような痛みと共に温かいものが溢れ出す感覚に震え、啜る音が騒がしく聞こえてくるので自分が失われていく感覚に陥っていく。 「ヒック……グスッ……ううっ……グスッ」 いつのまにか僕は泣いていた……苦しくて止まらなくなっていた。 「なんで泣くん?」 彼はペロッと首筋を舐めた後、僕の頬を伝う涙に触れてそう言った。 「死にたくない……」 「俺の血や肉になって生き続けるんやで?」 「僕という存在は無くなってまうやん……そんなん嫌や」 僕が彼の瞳をしっかり見てそう言うと、彼の瞳がゆらゆらと揺れた。 「……存在があれば生きてるって言えるん?」 彼は悲しそうに目を伏せた。 「色んなものを傷つけることが生きてるってことなんか?」 彼は吐き捨てるような問いかけるような感じでそう言った。 「吸血鬼だって人間を傷つけることで生きてるやん、人間と一緒やで?」 僕は皮肉るようにそう言ってフフッと笑った。 「でも、吸血鬼は不死身やもんな……」 そう言ってため息をついた後、僕も目を伏せる。 「俺、こんな自分嫌や……」 「僕も自分が嫌になるわ……」 消えたほうが楽やと、僕も彼も思った。

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