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第2話

キッチンへ近づくにつれて父親と知らない誰かの話し声。そして、料理をしているのだろう、美味しそうな匂いがしている。 「ただいま……」 未央は何故か警戒したような小声でキッチンに居るであろう父親に声をかけた。 「未央おかえり」 未央の声でこちらを満面の笑みで振り返り声を返す父親。 父親の横に立っている人物も未央を見た。 「あ……」 「あれ?」 その人物をみて先に声を上げたのが未央。そして、未央を見た人物も同じく声を上げた。 「え?何?知り合い?」 父親がキョトンとして2人を交互に見る。 「父ちゃんこそ何で……その人と」 父親の横に居る人物は未央の定期を拾ってくれた花屋の人だった。 「なんだあ……君が未央くんだったんだあ」 花屋の男性はいつも見せるやわらかそうな笑顔で未央を見る。 未央は照れて閉まって俯く。 「えっ?えっ?何?どこで知り合ったんだよおお!!」 父親だけが状況を飲み込めず焦っている。 「前にね定期券を拾った事あって」 男性の言葉で未央は顔を上げると「あ、あのあの時はありがとうございました……ちゃんとお礼言ってなくて」そう言って頭を下げた。 ようやく言えたお礼がまさか自分の家になるとは……。 「ううん、いいよう」 ニコッと笑う男性は相変わらず綺麗でかわいい。 かなり近くで見るのは初めてで……色白で色素薄い感じがする。髪の色……地毛だろうか?綺麗な薄めのブラウン。 「未央、着替えて来い。飯は俺と飛鳥で作るから」 あすか……さんと言うのかと未央は思った。 「う、うん」 未央は買ってきた食材を父親に渡すと急いで自分の部屋へ。 部屋に着くと鞄はほおり投げて、着替えもせずにまずはテツにLINEを打つ。 まだ部活中だろうけれど、この事態を誰かに言いたかった。 LINEには「花屋人が俺んちにいる!!」と何故いるのか自分では分からないから今の状況を送った。 すると直ぐに既読になり電話がかかってきた。 慌てて出る未央。 「なん?緊急事態みたいやん?なんで花屋の人がおるん?」 もしもし言う暇もなくテツからの質問。 「わ、わからん……帰ったらおった……父ちゃんの友達やったみたい」 「まじ?おじさんって交友関係広いねえ」 本当、そうだと思う。なんで……知り合いなのだろうか? 父親は普通のリーマン。あ、でも駅は使うからそこで?あれ?でも、中に入らないとあんな風に名前呼び捨てとか仲良くならないよな? うーんと考える。 「おーい!未央」 テツの声で我に返る。 「あ、ごめん……」 「なあ、お礼は言えたと?」 「うん、いっ、言った」 「良かったじゃん……ヘタレじゃなくなってさ」 「うん」 未央が返事した時に電話の向こうでテツを呼ぶ声がした。きっと、部活中なのに出てくれたのだろう。 「ごめん、戻る!後で部屋にいくけん」 「わ、わかった!」 未央は電話を切ると着替えを済ませてキッチンへと向かった。 緊張してしまう。 「未央くん」 未央を見つけ微笑む彼。飛鳥。 「あ、馴れ馴れしいかな?」 名前を呼んだ後にハッと気付き顔色を伺うような仕草。 「い、いいえ!大丈夫です」 「良かった!僕は飛鳥でいいよ」 微笑んで未央に手を出す。一瞬、なに?と思ったが握手を求められていると分かり、その手を掴んだ。 ふわりとした感触だった。男性の手というより少し大きめな女性の手みたいな感触。 「ふふ、よろしくね」 微笑まれて照れてしまう未央。 「こーら、いつまで手を繋いでるんだ手伝え」 その間に入る父親。 「何?律さんヤキモチ?」 律(りつ)は未央の父親の名前。 父親の言葉で未央は慌てて手を離した。 「もう、ほら、余計な事言うから未央くん手を離しちゃっただろ?」 文句を言いながら飛鳥は律の手伝いを始める。 「お、俺もやる」 「未央はテレビでも見てろ、普段やってくれてるんだから、あ、宿題とかは?」 律の言葉に「そんなのないし」と言ってとりあえず、テレビ近くのソファーに座った。 2人をソファーから見ていると凄く仲良く見える。 父親も楽しそうだ。……未央といる時も楽しそうな顔をしているけれど、また違う笑顔だ。 飛鳥も花屋で見る接客の笑顔と違って可愛く見える。 彼は何歳なのだろう?20代後半にしか見えない。律は40代だからふた周り離れているように見える……友達ってわけではなさそう。学校の後輩にしても……学年かなり離れてるよなあ。 うーん!と悩み考える未央だった。

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