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第6話
「気色ん悪かってなん?どがん意味?男が男ば好きになる事に言いよると?」
テツは未央の両手首を掴み、グッと押さえつけて彼を見おろす。
いつもよりも、迫力があるテツに戸惑う未央。
「なん……手、痛い……」
いつもと違うテツに戸惑い、質問された事を答えない。
「答えたら離してやる」
テツの顔は怒っているようにも見えるし……何か真剣な顔にも見える。
どう答えて良いか分からない。なんせ、勢いで出た言葉だから。
「未央は同性ば好きになる事を差別するん?」
「…………」
「気色悪かってそういう事やろ?」
テツは掴んだ手に力を入れる。その瞬間、未央の顔が歪む。
「誰かを好きになる気持ちに対して気色悪いとか……未央最低やな」
「ちがっ、」
最低という言葉と誰かを好きになる事に対して文句を言ってしまったのかと未央は青ざめる。
「そういう事やろ?」
「違うもん!!」
差別とかそういうつもりで言ったのではなかった。言葉は選ばなければいけないのだけれど、感情が高ぶっている時は言葉選びが出来ない……でも、こういう時こそ自分の隠れた部分が出てくるのだろうか?
「じゃあ、何で家出してきたん?」
「……ま、前から前兆あれば落ち着いてたかも知れん……急に来るから」
未央は何故かしどろもどろで答える。自分の心の中をちゃんと説明する事が出来ない。
「……じゃあ、同性を好きになる事に対しては?」
「わ、わかんない!俺、そもそも誰かを好きになった事ないけん、良くわからん感情やもん!テツは好きな奴おると?」
質問してみて、自分で何言っているのだろう?と思ってしまった。
「おるよ」
さっきまで少し怒っていたようなテツの口調が大人しいというか、真剣そうなものに変わっていて未央も驚いた。
テツに好きな人がいるなんて初耳!!!
「えっ、誰なん?俺が知っとる人?えっ?いつからなん?俺、知らんかった……何で言うてくれんの?」
驚きから徐々に寂しい気持ちへと変化してゆく。
何でも話してきたと思っていたけれど、自分達の恋愛の話ってした事ないかも。クラスメイトの恋愛話を話題にするくらいだった。
そもそも、未央は初恋さえまだだった。
「何……その泣きそうな顔」
ふっ……とテツの顔がいつもの知っている顔に戻り、少し笑っているように見えて未央はホッとした。
「な、泣きそうやなかし」
「俺に好きな人おる事、ショックなん?」
「……ショックっていうか……」
未央はモゴモゴと言葉を声に出来ずに飲み込んだ。
「……俺、お前が好きったいね」
「へ?」
テツの突然の告白に驚いて固まる未央。
「別に良か答えは期待しとらんし、言うつもりもなかったし……でも、未央が同性愛に対して気色悪かとか言うけんさ……まあ、勢いたいね」
テツは笑ったけれど、どこか寂しそうで。そういう顔は見た事がなかったからどう反応して良いか分からない。
「未央のオヤジさんが羨ましか……こういうのってさ、世間では冷たい反応されるし、未央も現に困ったような顔しとるしさ……」
テツは掴んでいた未央の手を離すと彼から離れた。
「お前、もう帰れ」
「えっ?」
帰れという言葉に驚いて身体を起こす。
「気まずいやん?」
そういうモノなのか?と未央には分からない。
「……お、俺はこういう事、よう分からんけん……気まずいとかも理解しとらん」
未央の言葉にテツはあははと笑い出した。
「お前って緊張ほぐしてくれるよな」
「えっ?えっ?そうなの?」
自分のどの発言で緊張がほぐれたのか分からずキョトン。
「そう……お前のそういうとこも好きやと思う」
じっ、と見つめられて未央は顔が熱くなるのを感じた。
「お、俺……ようわからんもん……」
「うん、未央、お子ちゃまやけんな」
「はあ?ふざけんな!」
お子ちゃまという言葉に反応して怒る。でも、お子ちゃまかも知れない。
「だって、恋愛まだやろ?」
「……わからん……好きになるってどういう事なん?テツは俺のどこが好きなん?いつから好きなん?俺は気づかんかった」
「質問攻めやな」
笑うテツ。
「分からん事は質問せんばやん……先生がいつも言いよるやん?分からない事は質問して理解しろって」
「ここで先生を出す?」
またテツのツボに入ったのか笑い出す。
「だって!本当にわからんとやもん!!」
頬っぺを膨らまして拗ねる未央。テツにはそれが可愛く映ってつい、彼を抱きしめてしまった。
突然のハグに「ふあっ」なんて変な声が出てしまった未央。
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