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第15話
突然、ぎゅうっと強く抱きしめられた。
もうエッチはしないぞ!という意味を込めて、ジタバタ暴れると耳元で「何もしねぇよ」と落ち着いた声が聞こえた。
ちょっと苦しいけど、この体温が落ち着く、かもしれない。
「お前は頑張りすぎだ。ちょっとは力抜け」
「頑張ってなんて、ない…。弟の為にもっと…」
もう俺には、頑張る、頑張らないの定義は分からない。だけど、俺は誰に何を言われようと、頑張るしかないのだ。
「そうだ」
いきなり男が閃いた、と言わんばかりのドヤ顔で
「お前、俺のモンになれよ」
…は?
「そしたら金には困らねぇし、その弟も一緒に養ってやるよ」
「???」
何コレ、プロポーズみたい。落ち着いて、今日初めて会ったばかり。早まるな、とにかく落ち着け。
お金の話は魅力的だが、自我を保て俺!
よく考えてみろ。こんな上手い話あるわけない。きっと言葉巧みに誘って、外国に売られるかもしれない。それか一生奴隷として働かせるか、もしかしたら臓器を売られるかも。
なんて事も考えたが、この人はこんな事しそうにないな。
その美味しい誘惑には騙されないぞ!そもそも今日が初対面でこの人の事なにも知らないのに、いきなり同居とか意味わからない。
まぁとりあえず断る。
「遠慮しときます」
「じゃあこうするか。1ヶ月だけお試し期間でなってみるとかどうよ?」
「嫌です」
この人が何を思ってそう言ってくれているのかは分からない。
すごく魅力的な話なのだが、俺は少々負けず嫌いな性格で。他人に頼るとか、助けてもらうとかはあまり好きではなかったし、身内なら分かるが赤の他人に多額のお金を払わせるなんて出来ない。
どうせこの人も冗談で言ってるのだろうし。遊び慣れてそうだから、色んな女の子にも同じこと言ってるんだろうな。
間に受けない方がいい。
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