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第16話
「素直じゃねぇな。夏樹クンは」
「…え、なんで名前知って…」
突然名前を呼ばれ、戸惑う。
まだ名前言ってなかったと思うんだけど…
「すまん、名札見た」
「あ、あぁ…そういう事ね」
よかった、勝手にカバン漁られたのかと思った。流石に考えすぎだよな。我ながら最低な事を考えてしまった。
今だけは謝る、ごめんなさい。
「…貴方の名前は?俺だけ知られてるとか嫌だし」
「レン」
「…レンさん…」
かっこいい名前だな。俺の名前は女の子みたいだってよくからかわれたから、そんなかっこいい名前に憧れる。
まぁこの人なら、からかった奴全員ぶん殴ってそうだな。
「レンさん、俺そろそろ帰ります。お金、3万でいいです」
「は?処女喪失で3万は安すぎじゃね?5万やる」
「あー、そういうモンですか?じゃあ、それで」
俺はレンさんから5万円を受け取って、ホテルを後にした。
お互い名前は知っているものの、もう合うことはないだろう。
第一印象は最悪で、横暴な男なのかと思っていたが、案外優しかった。少し別れるのが寂しいと感じたのは、あの人の優しさに触れたからだろうか。
駅へと向かう中、ブブッとカバンに入れてあったスマホが震えた。
弟からかもしれない。心配させているかなぁ、なんて思いながらスマホを見ると、それは予想外の人物からで。
『また明日な』
そう送ってきていたのは、レンさんからだった。
LIMEお友達になった覚えないんだけど!?やっぱり勝手にカバン漁ってたな!?さっきの謝罪は取り消す!俺の考えが正しかった!
もう既読無視してやる!
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