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第17話

* 「…なんで居るんだよ…」 「おう、お疲れさん。どっか飯でも行こうぜ」 もう会うことはないと思っていたのに… なんで会社の前で待ち伏せしてんだ。しかも周りに女をはべらせて。 俺なんかよりその周りにいる女の子と食事に行けばいいじゃないか。 「えー、遠野くんの知り合い?すっごいイケメンじゃん!もっと早く教えてよぉ!」 「いや、知り合いって訳じゃ…」 同じ部署の女の子が鼻息を荒くして興奮している。確かにレンさんイケメンだし、気持ちはわかるけど…。 だけどこの人ドSだし俺様だぞ!でもそんな人から見える優しさが女心をくすぐるのかもしれない。ギャップ萌えとか言うやつだな。 「すまん、今からこいつと飯行くから。じゃあな」 「え、俺行くなんて一言も言ってないですけど」 そのまま無視して帰ってやろうと思っていたのに、即捕まってしまった。 有無を言わさず引っ張り連れていかれる。 後ろからは「あーん!待ってぇー!」と女の子たちの叫びが聞こえてくる。 女の子より俺を優先させて良かったのか? せっかく彼女できるかもしれないチャンスだったのに…。 「何食いたい?」 「別になんでも」 「んじゃ焼肉行こうぜ。お前はもっと太らないとな」 焼肉かぁ。最近食べてなかったな。 あの香ばしいお肉の匂い、程よく脂の乗ったお肉…想像するだけでご飯一杯いけそう。焼肉に行くお金もないので、焼肉屋さんの前は極力通らないようにしていた。前を通ると焼肉の美味しそうな匂いがして、どうしても食べたくなってしまうから。そんな時は『我慢我慢我慢』とひたすら唱えながらガムを噛む。 「夏樹はいつもどんな飯食ったらそんな細くなるわけ?」 「朝はパン、昼もパン、夜は色々」 「不健康だな」 別にいいだろ、パン好きだし。レンさんに迷惑かけてる訳じゃないし。 それにご飯よりパン派な俺が嬉しいんだからそれで良いだろう。

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