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第22話

「お、出たか。こっち来い」 「…はい」 男にしては長い風呂から上がり、ベッドの上で寝転んでいるレンさんがペラっと布団をめくって手招きをしている。 ドキドキしながらレンさんの隣に寝転がると、ぎゅうっと抱きしめられた。 「夏樹、キスしていい?」 「うぇ!?キス!?」 「嫌なら別に」 キスとか…した事ない…。 けど…してみたい…。レンさんなら、大丈夫かも、しれない…。 「れ、レンさん、どうぞ…?」 「…目瞑って」 意を決してぎゅっと目を瞑る。視覚が閉ざされ、不安でレンさんにしがみついた。目が見えない分、些細な事に敏感になってしまう。 ふにっと柔らかいものが触れる感覚がした。 そっと目を開けると、レンさんはクスクスと笑っていた。 え、俺なにか変な事した?! 「お前、ちょっとは力抜けよ」 「な!?は、初めてなんだから仕方ないでしょ!」 「え、初めて!?なんか、すまん…」 え、ちょっと、レンさんが謝るのは可笑しいでしょ。 俺がいいって言ったんだし、この歳でキスが初めてなんて思わないだろう。 と言うか、冷静に考えてキスよりもすごい事したのに今更キスは嫌とか言えないよな。 初めてのキスはレモンの味とか言うけれど…レモンの味はしなかった。 「やっぱりお前、可愛いな」 「か、かわいいって…意味わからんし…」 恥ずかしくて、布団の中に潜り込む。 初めての事ばかりで、レンさんに迷惑かけていないだろうか。セックスも、キスも初めてなんてまだまだ子どもだ。 もっとかっこいいスマートな人になりたい…。

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