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第38話
「それじゃあ俺が作るのもやめた方がいいですよね…」
「え?夏樹が作ってくれるのか?」
「はい。味の保証はしませんけど」
俺の家の狭いキッチンと違い、大きく広々とした蓮さんの家のキッチン。お料理してみたい気持ちもある。
見た感じキッチン用品は揃っているみたいだ。だけど、蓮さん自身は料理しないし、キッチンも使うなと言われているらしいから、部外者の俺が色々キッチンを弄りまくるのはどうかと思うが。
蓮さんは少し考えてから、うん、と頷いた。
「夏樹の手料理食べたい」
「えーと、使ってもいいってことです?」
「あぁ」
本当か!やった!広々キッチン夢だったんだ。
狭いキッチンとは違い、物を置く場所に困らない。しかもキッチンヒーターが3つもある!感動!!
わくわくでキッチンに向かい、冷蔵庫を開けさせてもらった。
「な…なにこれ…」
「あ、すまん」
冷蔵庫の中にはミネラルウォーターしか入ってなかった。食材もないのにどうやって料理しろと言うんだ。と言うか、蓮さんっていつも何食べて生活してるの?水が主食なのか?
いや、諦めない。買いに行けばいいんだ!
「食材、買ってきます!」
「待て、俺も行く」
「じゃあ一緒に行きましょう! お店閉まる前に早く!」
グイグイと蓮さんの腕を引っ張って玄関を出る。目の高さが高層ビルと同じと言うことは、ここは恐らくマンションの最上階で一番いい部屋という事になる。
流石社長。家賃4万円のボロアポートとは大違いだ。
その見慣れない景色に感動しながらも、スーパーが閉まらないか心配で急いでエレベーターに乗った。
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