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第39話

「う゛~!くやしい!」 「別にいいだろ。食材が手に入ればそれで」 「それはそうですけどー…」 結局、蓮さんのマンションを出てすぐに迷子になってしまった為、いつも行ってる激安スーパーには行けなかった。 もし無事に辿り着いたとしても恐らくもう閉店していたと思う。 なので仕方なしに近くにあったデパートに入ったのだった。 デパートとか1、2回しか来たことがない。値段が高すぎて恐ろしくなるから苦手だ。明らかに庶民向けではなく、お金持ちのマダム向けだと思う。 「何を作ってくれるんだ?」 「肉じゃがを作ろうかと」 「肉じゃが作れんのか!すごいな!」 いやいや、そんなに凄くないし、あまりハードルを上げないでくれ。緊張しすぎて失敗するかもしれないから。尊敬の眼差しで俺を見る蓮さんを軽くあしらって野菜売り場で野菜を物色する。 うーん…品質はいいんだろうけど、高い…。とにかく高い…。こんな高いじゃがいも初めて見た。普通のスーパーに売っている物と何が違うのだろう。パッと見た感じでは、安い物も高い物も同じに見える。 「このじゃがいもにするのか?」 「いや…高すぎて手が出ません…」 「別にいいだろ。金払うの俺だし。好きなの選べよ」 「いや、そうだとしても…」 安いじゃがいもを知っているからこそ、こんな高いじゃがいもを買うなんて勿体ない!と俺の勿体ない精神が物申す。 貧乏人は常に節約生活を送っている故、いきなり好きなの選べなんて言われると困惑する。 カゴを持ってくれてる蓮さんはヒョイヒョイと値段も気にせず野菜をカゴに入れていく。 金持ち恐るべし…。 俺では絶対に考えられない。値段は安く、なるべく大きい物を選ぶようにしている。

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