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第41話
食材を買って家に戻る。
はぁ…疲れた…。まさか帰る途中マダムに捕まって蓮さんが連れて行かれそうになるなんて予想していなかった。
「蓮さんっていつもああなんですか?」
「ああって?」
「マダムに連れて行かれそうになったり…。この前会社の前でも女の子はべらせてたし…」
この男、顔はいいし、性格もまぁいいと思う。それにお金持ちなんて、女が黙ってる訳ないだろう。
「まぁ、たまにあるな。いつもじゃないぞ」
「そーですか…。いいじゃないですか、モテモテで」
「夏樹はモテたいのか?」
「モテたい訳じゃないです。女の子の扱い難しいし、面倒だし」
こんな事言うと一生結婚できないとか言われるけど、事実だ。
この歳で結婚がどうのこうの言われても逆に困る。今の時点で大変なのに、更に将来の結婚について考えろなんて馬鹿じゃないのか?と俺は思う。
別に俺、結婚したいと思ってないし。
「なら、俺にしとけ。俺は女じゃないから面倒じゃないし、金持ってるし、可愛がってやるぞ?」
「…ふふ、何ですかそれ。慰めとかいいです」
「本気だ」
確かに蓮さんの目は嘘をついているようには見えなかった。
だからこそ、怖かった。蓮さんみたいなすごい人が、底辺の俺なんかをどうして…。
蓮さんにはいつか素敵な人が現れるよ。だから俺なんて止めておいた方がいい。
蓮さんから目線を逸らせ、買ってきた食材をキッチンに並べる。
「はいはい。 肉じゃが作りますよ。蓮さんも手伝ってください」
俺が話逸らしたの、気付いてると思う。
だけど、蓮さんは何も言わずに手伝ってくれる辺り大人なのだと思う。
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