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第55話
「なんかこの肉…硬いな」
「そうですか?こんなモンですよ」
ショッピングモールの中にある、焼肉屋さんに来ていた。有名な焼肉チェーン店だ。
懐かしい。庶民は焼肉と言えばここなんだよ。
蓮さんはお肉に文句つけてるけど、こんなモンだと思う。と言うか、これが普通だと思う。
「そりゃあ、蓮さんが連れて行ってくれるお店の方が美味しいですけど。俺はこの味に慣れてるから」
「そうなのか。まぁ、肉はアレだがサラダは美味い」
そう言ってさっきからサラダしか食べていない。そんなにお肉美味しくないかな?
確かに硬いし、肉の旨みは感じられないけど、安いし食べ放題だし結構人気なんだよな。
「夏樹、なんか怒ってるか?」
「……別に。 あのお姉さんたち美人でしたね。俺なんかより、あの人たちと遊べば良かったんじゃないの」
「なんだよ、嫉妬か。俺は夏樹と一緒にいたいから絶対に嫌だ」
仏頂面でそう言えば、クスクスと笑いながら蓮さんが返事を返す。あのモヤモヤは嫉妬だったのか…?なんで嫉妬なんか…。
しかし、あのモヤモヤは消え去り、蓮さんから『一緒にいたい』と言われた言葉で自分でもびっくりするくらい心が満たされたのだった。
「ふぅ、お腹いっぱい」
「満足したか?」
「はい、俺は満足ですけど…、蓮さん全然食べてなかったしお腹空いてるでしょ?」
「いや、大丈夫だ。夏樹の嬉しそうな顔が見れたから」
またこの人は恥ずかしい事ばかり言って!
俺の顔見ても、お腹いっぱいにはならないだろ!
何か腹の足しになるもの無いかな。蓮さんの好きなもので、何か…。そうだ。
「蓮さん、コーヒー好きですか?」
「好きだぞ」
「ブラック?」
「あぁ」
「今日は少し暑いですね」
「そうだな」
よし、結構聞けたぞ。それじゃあ、ちょっと行ってくるか。
「ちょっと待っててください!」
俺は蓮さんを置いて、ある場所に走った。
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