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第56話
某コーヒーショップに来て、アイスコーヒーとキャラメルフラペチーノを頼んだ。
蓮さんが奢ってくれた金額より安いが、こんな時しか奢る機会がないからな。
店員さんからコーヒーを受け取って、蓮の元へ戻る。
今度は女の子ははべらせて居ないみたいだ。だけどチラチラ様子を伺っている女性が数人。綺麗な顔をしたお姉さん、アイドルみたいに可愛い顔のお姉さん。中には制服を着た子もいる。
度々、蓮が女性から求愛されているのを見ると胸がキュッとなるのだ。胸が痛くなる。
『俺だけみてればいいのに』なんて思ってしまう。このドス黒い、醜い感情を一体どうすればいいのか分からず、ずっと胸の中に隠してある。こんなの俺じゃない。今までこんな気持ちになった事がなく、戸惑った。
ジリジリと女性たちが蓮に近づいて行くのを見て、うかうかしてたら取られてしまう!と思い、早足で蓮の元へ駆け寄る。
「どうぞ、アイスコーヒーです」
「わざわざ買ってきてくれたのか。ありがとう、嬉しい」
「いえ。ここのコーヒーはちゃんと美味しいと思いますよ」
蓮さんが本当に嬉しそうな顔をしていたので、こっちまで嬉しくなる。てか、このくらいで喜ぶなんて意外だ。
仕方ないからたまに買ってあげよう。
ストローを通して、キャラメル味のコーヒーが口の中に広がる。苦いコーヒーは飲めない事はないのだが苦手だから、いつもフラペチーノかココアしか頼まない。子ども舌で何が悪い。
「このコーヒー美味いな。どこで買ったんだ?」
「そこのコーヒーショップです」
「へぇ、名前は知ってたが飲むのは初めてだな。 お前のソレは何だ?」
「俺のはキャラメルフラペチーノです。苦いの苦手なんで」
キャラメルフラペチーノ……?と頭にハテナを浮かべている蓮さん。確かに知らない人は何だその長い名前と思うかもしれない。
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