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第57話
「一口飲みますか?」
「いいのか?なら俺のも一口やる」
「苦いのは得意じゃないんだけど……」
じーっと俺の飲むドリンクを見つめていたので、一口あげることにした。
俺にはちょうどいいけど、蓮さんにはちょっと甘いかもしれない。甘いキャラメルの味が口の中に広がって、とっても美味しいんだ。
苦いのは苦手だが、蓮さんも一口くれると言うので、ちょっとだけ飲んでみた。
「苦い!」
「甘すぎだろこれ」
お互いに変な顔をしている。
でもまぁ、大人になる為に少しずつ苦いコーヒーにも慣れていかないといけないから、蓮さんに合わせるのも良いと思う。
それにしても、こんな苦い飲み物が美味しいと思う日が来るのかが謎だ。コーヒーが美味しいと感じたら、その瞬間から俺は大人になったという事なのだろうか。……いや、もう社会人だし大人なのだが。
「でもお前はこれが好きなんだろ? 俺も甘い物に慣れる良い機会かもしれない」
「俺も、苦いコーヒーも飲めるようになるチャンスかもしれないです」
まさか蓮さんも同じこと思っていたとは。確かに蓮さんはあまり甘い物を食べているイメージはない。俺と一緒にいる時は合わせて食べてくれているから、嫌いではないのだろうけど。
何か蓮さん、難しい顔をしているが大丈夫だろうか。
「今すぐ抱きしめたい……」
「だ、ダメです! ここお店の中だし!」
「二人きりならいいのか?」
「え、うーん…… 二人きりなら、はい」
人に見られるのが嫌なだけで、別に蓮さんとハグするのは嫌じゃない。
ハグくらいみんなしてるし。
だけど蓮さんは物凄く嬉しそうな顔をしていて、一瞬その顔にドキッとしてしまった自分がいる。
ど、ドキッてなんだよ……。勘違いだろ……。
「蓮さん、次はあのお店に行きたいです」
「いいぞ」
気を紛らわせたくて、次のお店に移動した。
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