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第58話
それから服を見たり、アンティークのお店に入ったり、可愛い雑貨屋さんに行ったりと満喫したのだった。
久しぶりだ、こんなに遊んだの。蓮さんに遅くまで付き合って貰っちゃった。俺と丸一日過ごして良かったのだろうか。
すっかり外は暗くなり、もう18時前なのだと気づく。
流石に今日は帰らないとな。弟も待ってるだろうし。
そう思いポケットからスマホを出して画面を開くと弟からメッセージが来ていた。
「えー!また泊まり!最近多すぎじゃない!?」
「弟か」
弟からは、『今日も友達の家に泊まる』と短いメッセージが入っていた。まだ中学生だし、最近泊まりが多すぎる気がする。これは言った方がいいよな……。
「彼女でも出来たんじゃないか?」
「か、かかか彼女!?春樹に彼女!?」
「だってそうだろ。友達の家にそんな頻繁に泊まるか?彼女なら腑に落ちるんじゃないか?」
「そ、そっか……。もう中学生だもんな……、そうだよな……」
まさか弟に彼女ができる日が来るとは思わなくて、ビックリして大きな声を出してしまったので慌てて口を塞いだ。
だってまだ中学生だし、彼女とか、恋愛とか考えもしなかった。俺が中学生の頃はもちろん彼女なんて言う特別な人はいなかったし、彼女が欲しいとすら思わなかった。……と言うより、まだ母親がいた頃だから、「中学生で彼女なんて早いわよ」なんて言われていたっけ。
そう言えば最近弟から学校の話しはあまり聞かないし、やっぱり一人は寂しいのだろう。
分かっていたけど、お兄ちゃんちょっと寂しい。
「落ち込みすぎだろ」
「だって……、なんか、寂しくて……」
「俺がいるから寂しくないだろ」
そう言って、俺の手をぎゅっと繋いでくれる。
本当に、こういう所ズルいと思う。
俺も、そっと握り返した。
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