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第60話

「あ……ぅ、……れん、さん……」 「はぁ……すげぇ可愛い。 俺のこと考えてくれてたのか」 「考えたと言うか……女の子の方がいいんじゃないかって……」 ショッピングモールで蓮さんを囲むお姉さんたちを思い出す。 可愛かったし、おっぱい大きかったし、本当は男の俺よりも女の子の方がいいと思っているんじゃないだろうか。 無理に俺の事を好きだと言っているんじゃないだろうか。 蓮さんは会社の社長さんで、きっと蓮さんのご両親も可愛いお嫁さんを連れてくるのを心待ちにしている。俺は男だから、結婚もできないし、赤ちゃんも産めない。 それに、同性同士の恋愛は認められつつあるが、やはりまだ偏見はある。もし、蓮さんと俺が付き合っているとバレたら……と思うと怖い。 「夏樹が何を考えているのか知らないが、俺は女の子より夏樹の方が好きだ。男とか女とか関係ない」 「……そんな事言って、ショッピングモールでお姉さんに囲まれてたクセに」 「嫉妬か?夏樹が嫌ならもう寄せ付けない」 「嫉妬……?」 この感情が嫉妬……?蓮さんがお姉さんたちに囲まれて嬉しそうに(偏見)していたのを見て、イライラしたりムカついたりしたのは全部嫉妬だったのか。 でも嫉妬なんて……まるで俺が欲張りみたいじゃないか。 「そんなの、欲張りみたいじゃないですか……」 「欲張りって?」 「俺の事だけを見てて欲しいって……」 本当は、少しだけ思ってしまった。 俺と一緒に来てるのに、女の子をはべらせて、しかも抵抗しないなんて、ムカつく。 俺だけを見ていて欲しい。そう思ってしまったのだ。

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