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第71話
「また女の子はべらせて……」
「夏樹、お疲れ様」
おいお前、この前と言っていた事が違うじゃないか!もう女の子はべらせないんじゃなかったのか!?
だけどここは外だし、そんな事でいちいち怒ってもなぁ…。
周りからみたら完全に変な人だし。
「遠野くんお兄さん居たんだね!すごいかっこいい~!」
「お兄さん?」
意味が分からなくて蓮さんを見ると、コクリと頷かれたので、話を合わせろということなのだろう。
俺のお兄さんという設定にすれば、手を出しにくいもんな。蓮さん考えたな。
「そうなんです。俺の兄さんで……。もう用事あるんで行きますね!お疲れ様でした! ほら、兄さん行くよ!」
「あぁ」
これ以上騙すのは心が痛いので、早く話を切り上げてスタスタと蓮さんの手を引きながら歩く。
いつも弟に「兄さん」と呼ばれているから呼んでみたが、いざ自分が呼ぶのは恥ずかしい。
蓮さんは「兄さん」と言う感じではないし。
「夏樹の兄さんになりたい」
「は?何言ってるんですか……」
「だって夏樹に『兄さん』と呼んでもらえるだろ?」
そんな単純な理由で!?
本当に蓮さんはたまに子どもみたいな事を言い出すから、見た目とのギャップに驚く。
そのギャップもまた可愛いんだけどさ……。
グイッ蓮さんの腕を引っ張って、誰にも聞こえないように耳元で囁く。
「兄弟だと、エッチできないけど……それでもいいの……?」
「嫌だ。 兄になる事は諦めた」
「ふふ、そうですか」
諦めるも何も、本当に兄弟にはなれないぞ。
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