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第72話
今日は連れてきてもらったお店は、いつもながら庶民は絶対に入らないであろう佇まいのお店。
今回は焼肉じゃなくて、しゃぶしゃぶのようだ。
俺がお肉好きと知っててのチョイスだろうか。グッジョブだ。
「何食べる?好きなの選んでいいぞ」
「えーと……」
うーん、一応値段を見てみたがやはり高い…。好きなの選べと言われても、何が何だか分からない。出汁の種類も何種類かあって、お肉も選べるのか……って、お肉高っ!
ここはいつもの……。
「蓮さんのおすすめで!」
「いつもそれだな。本当に俺のおすすめで良いのか?」
「はい。しゃぶしゃぶ初めてなんで、何が何だか分からないんです……」
「そうなのか。なら美味いもん食わせてやる」
そう言って、蓮さんは店員さんを呼んで何やら注文しているが、日本語なのに日本語が理解できない。聞いたことのないお肉の名前や出汁の名前が出てきて、まるで呪文のようだ。
頭に3つくらいハテナマークを浮べて、蓮さんが注文するのを聞いていた。
愛想の良い店員さんがにっこりと微笑んで出て行く。 そこで唐突に思い出す仕事の事。
「あ、そうだ。また打ち合わせの日程決めたいんですけど」
「あぁ、そうだな。早い方がいいんだよな?」
「いえ、蓮さんのスケジュールに合わせるよう言われてますので、空いてる日で大丈夫です」
「そうなのか。じゃあ、次の金曜日はどうだ?お前のために空けてるんだ」
「じゃあ、その日に!」
決まった日程をスケジュール帳にメモする。
俺はまだまだ下っ端だからそれ程予定が詰まってる訳でもないので、金曜日に『打ち合わせ』と小さい字で書いておいた。
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