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第77話
ノリで付き合うなんて我ながら最低だと思う。
だけどあのままあの子を放っておくのは可哀想だったし、こうするしかなかった。
しばらくの間、クラスメイトからからかわれていたが、ずっと無視し続けていたらいつの間にか言われなくなった。
「なら、俺が初恋相手なのか。嬉しい」
「そうなりますね」
そんな話をしていると、あっという間に俺の住んでいるアパートに着いてしまった。
部屋の電気が付いていて、弟が帰っている事にホッとする。弟と話し合わないといけないな。
「蓮さん、送っていただいてありがとうございます。また今度」
「あぁ、気を付けてな」
気を付けて、って部屋はすぐそこなんだけどな。
少し、蓮さんとお別れするのが寂しい気持ちになる。でも、こんな事言ったら困らせてしまうから言わない。
「ただいまー」
夏の夜は蒸し暑くて、部屋の中も暑かった。
ボロアパートの為エアコンは無いし、エアコンを設置するお金も電気代もないので扇風機で夏を凌いでる。
弟は今お風呂に入っているのか、姿は見えなかった。
制服脱ぎっぱなしだし……。ハンガーに掛けてやろうと思い、ズボンを手に取ると下に春樹の通帳が埋もれてあった。
あぁ、通帳作ってたんだっけ……。お小遣いも全然あげれていないし、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
残高を確認しようと思い、ペラペラとページを捲って行くと、お小遣いもあげてないのにそこには有り得ない数字が並んでいた。
隔週で5000円ずつ振り込まれていて、10万は超えている。
え……?なに?どういう事? 俺はおこずかいなんてあげてないし、この10万は一体どこで手に入れたんだ?
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