83 / 114

第83話

「お客さん、痒いところはないですか?」 「無いです」 「じゃあ流すので目瞑って下さい」 今は蓮さんに頭を洗ってもらっている。 自分で洗えると言ったのに、蓮さんが洗うと聞かないから、仕方なく。 今の蓮さんは『シャンプー屋さん』らしい。蓮さんって大人っぽく見えて、実は子どもな所もあるよな。『シャンプー屋さん』なんて幼稚園の子どもが言いそうな事なのに。 蓮さんは意外とシャンプーが上手かった。と言うか、人に頭を洗ってもらった事はないけど自分で洗うより気持ちよかった。 言われた通り、目を瞑ると丁度いい温度のシャワーをかけられる。 わしゃわしゃと泡を流したら終わりだ。 「はい、終わり。体も洗ってやろうか?」 「え、体は自分で洗います!」 「そう言うと思った」 少し残念そうな顔をして、湯船に浸かる蓮さん。 一緒に風呂に入ろう、なんて言うからてっきりエッチに持ち込まれるのかと思っていたが、ただ普通に一緒にお風呂に入っているだけだ。 今日はエッチしたい気分じゃないから、その方が有難いんだけど……。 体を洗って、湯船に浸かると後ろから蓮さんに抱きしめられた。 向かい合わせで入るのは何だか恥ずかしいから、蓮さんに背中を預ける形で入る。 大きな体に抱きしめられて、安心する。 いい匂いの入浴剤も入れてくれていて、心も体もリラックスできた。 少し心に余裕ができて、気持ちがスッキリした気がする。 「蓮さん、ありがとう……」 「どういたしまして」

ともだちにシェアしよう!