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第84話
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次の日、俺は無事復活して会社に出勤しようとしていた。
たくさん泣いたが、蓮さんが冷やしてくれたお陰であまり腫れずに済んだ。目は少し充血しているが、目薬をさしておけば大丈夫だろう。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫です。じゃあ、行ってきます。蓮さんも気をつけて」
「あぁ。行ってらっしゃい」
俺の事を心配して、何度も「大丈夫か」と確認される。昨日たくさん泣いたからスッキリした。
蓮さんに「行ってきます」と言うのは何だか変な感じだった。
でも、一緒に住んだらこれが当たり前になるんだよなぁ……。そんな日が来るのかは分からないけれど、それもいいかもしれない。
春樹は大丈夫だろうか。彼女の元で上手くやっているのだろうか。迷惑かけていないか。
不安は沢山あるが、春樹が選んだ人ならきっと大丈夫だと信じている。
春樹には、『もう一度話し合いたい』とメッセージを送ったが、未だ既読は付いていない。
許して貰おうなんて思ってない。だけど、もし叶うなら……前みたいに仲の良い兄弟に戻りたい。
「よし、今日も頑張ろう……!」
やる気スイッチを押して、ただひたすらに頑張った。
ぼーっとしていると余計な事を考えてしまうので、仕事だけに集中した。
新規開拓に行ったり、他の人のヘルプに回ったりと、余計な事を考える暇も無いくらい忙しかった。
普段はポンコツで、忙しいなんてゴメンだと思っていたが、今は逆に有難いとすら思う。
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